前編では、環境省の東北地方環境事務所の方々に取材を行い、東北に新たに生まれようとしているロングトレイル「みちのく潮風トレイル」が誕生するまでを紹介した。後編では、実際にその中の一区間を歩いてみたレポートをお伝えしたい。
今回歩いたトレイルの区間は、福島県の北端の町、新地町だ。西は鹿狼山(かろうさん)、東は太平洋に挟まれた人口8000人ほどの町である。南に隣接する相馬市とともに、2014年10月にトレイルコースが開通したばかりだ。
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朝9時の仙台発のバスに乗り、新地町役場へと向かう。東日本大震災以降、この区間の常磐線が復旧していないため、近隣から公共交通機関での移動手段は2016年4月現在、バスのみである。
10時過ぎに新地町役場へ到着した。たまたま晴天に恵まれ、真っ青な空に期待が高まる。今回案内を引き受けてくださった「鹿狼・山の会」の会長・杉平慶宏氏、事務局・小野俊雄氏の両名と、役場で落ち合い、10時半すぎに出発した。
「地元はただの田舎町だと思っていた」
まずは最初の目的地である龍昌寺へと向かう。道すがら、山の会のお二人に、ロングトレイルについて話を伺った。
初めは環境省から「ロングトレイルを作る」と言われても、いまいちピンとこなかったそうだ。「新地町の魅力はなんですか?」「どこを歩いてもらいたいですか?」と聞かれても、思い浮かばなかったという。
新地町で生まれ育った両氏は、新地町はただの田舎町であり、ほかの人が来ても面白いものなんてないだろう、と思っていた。
しかし、何度も新地町のコースを決めるワークショップに繰り返し参加するうちに、地元の大切さや素晴らしさを再発見できたと杉平氏は話す。