3月20日、オバマ米大統領がキューバを訪れた。現職米大統領による88年ぶりのキューバ訪問は、歴史に新たなページを刻む出来事となった。
オバマ大統領の訪問中にキューバ国民を熱狂させる、あるイベントがあった。首都ハバナで開催されたザ・ローリング・ストーンズのコンサートである。野外ステージに殺到する現地ファンの様子は日本のテレビでも映し出された。
自由主義国でも社会主義国でもストーンズの人気は絶大である。観客がストーンズのシンボルマーク「赤い舌」のTシャツを着て盛り上がる姿は、どの国に行っても共通だ。
しかし映像でそれらの観客を見ていて、他の国とは違う点に気が付いた。YouTubeなどでストーンズの最近のライブ映像を見てもらうと分かるのだが、他の国では多くの観客がスマホでステージ上を撮影している。しかし、キューバの観客でスマホを持っている人はほとんどいない。みんな「手ぶら」である。その姿は筆者にとって新鮮ですらあった。
その映像は、1961年の社会主義革命以来、統制経済路線を歩んできたキューバの現実をそのまま映し出していた。つまり、米国の経済封鎖やソ連の崩壊などによって経済成長が滞り、世界から取り残されているという現実だ。