今年のアカデミー賞で、作品賞、監督賞など5部門にノミネートされ、脚色賞を獲得した実話に基づいたシニカルな金融ドラマ『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(原題 The Big Short)(2015)が劇場公開中である。
MLBを舞台とした『マネーボール』(2011)の原作者で、金融界の一員だったこともあるマイケル・ルイスのベストセラー「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」の映画化作は、サブプライムローン問題をいち早く察知した男たちの物語である。
冒頭、ライアン・ゴズリング演じるトレーダー、ジャレッドが、見る者に向かい、MBS(Mortgage backed securities 不動産抵当証券)を考案したルイス・ラニエリについて語りかける。
「彼のことは知らないだろうが、マイケル・ジョーダン、アイポッド(iPod)、ユーチューブ(YouTube)を合わせたよりもあなたの生活を変えた人物なのだ」
リーマンショックを予期した男
そして、金融界享楽の時の映像が挟まり、登場から30年ほど経た2008年、世界経済を危機へと追い込んだことを伝える。
専門家もリーダーたちもそれを予見できなかった。しかし、何人かのアウトサイダーや奇人たちには、ほかには見えないものが見えていた。
その1人、クリスチャン・ベール(本作でアカデミー助演男優賞ノミネート)演じるエキセントリックな印象のファンド・マネージャー、マイケルは、住宅ブームさなかの2005年、MBSを調べるうち、高い格付けにもかかわらず、リスキーな変動金利型サブプライムローンが含まれていることを知る。
そして、当初は低く設定されている金利が上がる2007年に暴落が始まると予測する。
スティーヴ・カレル演じる世のシステムに不信を持ち続けるファンド・マネージャー、マークは、マイケルの動向を知ったジャレッドから話をもちかけられ、話に乗る。
ニューヨークへとやって来たばかりの若き投資家チャーリーとジェイミーもひょんなことから情報を得るが、ウォール街に打って出るには桁外れのカネが必要で、かつての隣人で元腕利き銀行家、ブラッド・ピット演じるベンの助けを借りることになる。