2月28日、第88回アカデミー賞授賞式が行われ、レオナルド・ディカプリオが5回目の演技賞ノミネートにして初めて主演男優賞を手にした。
その作品『レヴェナント 蘇りし者』(2015)は、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥが2年連続の監督賞、エマニュエル・ルベツキが3年連続の撮影賞、と、まさに絶好調のスタッフによるもの。
しかし、作品賞は脚本賞も獲得した『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)へと渡った。
そうした社会性、ドラマ性の強い作品を前に、作品賞、監督賞こそ獲得ならなかったが、アクション大作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)は、美術賞など最多の6部門で受賞。
作曲賞も、クエンティン・タランティーノ監督の血みどろウェスタン『ヘイトフル・エイト』(2015)のスコアへ。これまで400本以上の作品を手がけてきたエンニオ・モリコーネ、87歳にして初受賞である。
善玉、悪玉、卑劣漢
『ヘイトフル・エイト』は、南北戦争から数年後、吹雪で閉ざされたワイオミングの小屋に集う「Hatefulな8人」による密室推理サスペンス劇。
「タランティーノ組」の芸達者たちによる、誰もが善人でない、欲望や怨念むき出しの167分の長尺残酷ウェスタンである。
それは、モリコーネの音楽と相まって、タランティーノが敬愛してやまないマカロニ・ウェスタンの巨匠セルジオ・レオーネ監督作、特に『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』(1966)(原題「善玉、悪玉、卑劣漢」)を思い起こさせる。
「善玉」とて欲にまみれ、決して「正義」を実践などしないその映画は、イタリアへと「都落ち」していたクリント・イーストウッドがスターとなるきっかけとなった『荒野の用心棒』(1964)、『夕陽のガンマン』(1965)に続くレオーネの「名無し男」3部作最終作。
どれも、レオーネと同い年のモリコーネがスコアを書き、映画ともども、日本でも大ヒットした。