従軍慰安婦問題を本質的に解決していくためには、国際的に広がってしまった誤解を今後一歩ずつでも解いていくことが必要である。正しい理解醸成のためには、被害者感情に十分配慮した上で、きちんとしたエビデンス(証拠資料)=歴史事実に基づき、真摯に根気強く説明する努力を続けるしか方法はない。
前回(「慰安婦問題の一次資料には何が書かれているのか」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46281)は慰安婦問題に関するエビデンスとしての代表的一次資料を整理してみた。こうした資料が、慰安婦問題を議論する際のベースになる。だが、実際には日本でも韓国でもその中身が恣意的に取捨選択・解釈され、さまざまな誤解が生じている。今回は一体どのような誤解が生じているのかを見ていこう。
誤解を生ずる要因の主なものを3つ挙げる。それぞれについて、その内容と、どうすれば誤解が解けるのかを整理してみる。
要因(1)~「慰安婦」とは誰を指すのか?
今回の日韓合意では、「慰安婦問題」という言葉が政府によって公式に定義された。外務省発表資料によると、「当時の(日本)軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」という定義である。
ところが、あえて曖昧さを残すなど様々な配慮をしたせいか、2つの異なる内容を1つの文章にまとめてしまったため、逆に「慰安婦」の実像が分かりにくくなってしまった。
本来の言葉の意味を厳密に定義するならば、「慰安婦」とは当時の軍政規定(例えば、「軍政規定集第三號[馬来政監部]昭和18・11・11」)等で定義される、軍の特殊慰安施設(慰安所)に従事する女性」たちのことである。
名乗り出ている人は多くないが、「本来の慰安婦」は、そのほとんどが貧しい地方の出身ながら自らの親兄弟姉妹を飢餓や借金から救うために、(現地の市民と兵士を守るために)名誉と尊厳と覚悟を持って軍慰安業務に従事した人々である。厳しい時代を必死に生きた人々である。多くの「本来の慰安婦」が将兵と結婚し、または借金返済後にさらにお金を貯めて故郷に家を建てた等の証言もある。