米大統領選の予備選の山場であるスーパーチューズデー(3月2日)を迎え、不動産王ドナルド・トランプ氏(以下トランプ)の躍進が止まらない。
筆者は大統領選を「ライフワーク」と称しているので、ここで改めてトランプの強さの理由とスーパーチューズデーの結果を予想してみたい。
1カ月前、米アイオワ州の党員集会を取材した。民主党ヒラリー・クリントン氏やバーニー・サンダース氏の取材もしたが、どうしても現地で解き明かしたかったのはトランプが広範な有権者層から支持される理由だった。日本から米メディアの報道を見聞きするだけでは限界がある。
現地では学者から一般有権者まで多くの人から話を聞いた。端的に述べると3点に集約できるかと思う。
1 本音をストレートに語る
過去20年以上、候補たちは選挙対策本部の意向によって言動を「縛られてきた」。集会で支持者の前に現れた時、口にするのは選対委員長と打ち合わせた内容である。候補の言動はそこまで選対にコントロールされていた。
しかしトランプは違う。自分の思いの丈をストレートに述べている。ほとんど直感と思えるほどで、それが有権者の抱く連邦政府や既存の政治家への潜在的不満と重なる。選対の組織力が弱いこともあるが、トランプほど本音をさらけだす候補はこれまで珍しい。
トランプの集会で出会った会社員ジェファーソン・タルセットさんは早口で言った。
「トランプは大好きです。これまでこんな政治家はいなかった。野球で言えば時速100マイル(160キロ)の速球を1回から9回まで投げ続けられる投手みたいです。しかも変化球なんか投げない。まっすぐだけを投げ続けられる活力があります」
直後に話を聞いた女性は、「力づくでグイグイ押してくる強引さが今の米国には必要。トランプのような政治家を待っていたのです」と支援者だけに、褒めちぎった。
米国にも謙遜という概念はあるし、一部の人たちは人間としての慎み深さを重視してもいる。だがトランプのような自信過剰気味の言動を、多くの有権者が好むのも事実である。