昨年の2人目のアーティスト、グザヴィエ・ヴェイヨンの時には、彼がフランス人というためかどうかは分からないが、ここまでの抗議にはならず、そして、今回3人目の村上氏で、再度この騒ぎというわけだ。
好き嫌いは個人の自由、論争は歓迎すべきもの

「論争にも2通りあって、まず、この展覧会の存在自体が気に入らないという言い分。これについては、私たちにとっては、全く重要な問題ではありません」
「というのも、ここは宮殿であり、ミュージアムでもある以上、我々は良いものができるという限りにおいて、希望することを実行するという権利があります。その点において、世界的なビッグアーティストであるムラカミの展覧会は意味にかなっている」
「もう1つの論争は、『この作品が好きではない』というもの。そのように思うのは、人それぞれの自由です」と、ブリュネ氏の口調はきっぱりとしている。
さらに、論争が起きるのは「むしろ良いこと」だと、ブリュネ氏は言う。
「ショックの少ないアーティスト作品を飾るということももちろんできます。しかし、それはこれほど興味深いものでしょうか?」
「ショックが少ない、弱い・・・。後に何が残るでしょうか? たぶん何も・・・。私は、事前に満場一致だったというプロジェクトを手がけたことはありません」
「満場一致、それは確かに結構なことかもしれない。けれども、実現するまでに苦労するからこそ面白い。17世紀最大の芸術家らの仕事による宮殿を、コンテンポラリーアートで飾るというのは実際非常に難しいことです」
「何を見せるのか、それをどこに置くのか・・・。壁中に絵画や彫刻があって、既に満たされた状態の場所。ディズニーホールでもなく、現代美術館でもなく、世界一美しい宮殿を舞台に現代の作家が数カ月展示をするのは、むしろ賭けです」
「しかし、そこでは、まずアーティスト自身にとって、そして観客にとって、何かが作用するはず。奇跡の宮殿が、ムラカミの作品に語りかけるだろうか?」
「実現する前、それは保証の限りではありませんでしたが、今はこうして、それらは会話をしていると答えることができます」