9月14日から、ベルサイユ宮殿で始まった村上隆氏の展覧会は、日本でも既に話題になっているようだが、フランスでももちろん、始まる前からずいぶんと物議を醸していた。

村上の展覧会をベルサイユで開催すべきでない!

「Tongari-kun」 2003-2004

 9月3日付の日刊紙「ル・モンド」には、「ベルサイユわが愛」という団体が抗議集会を予定しており、もう1つ、マンガに反対するグループは法的手段に訴え、この展覧会を阻止する構えだという記事が掲載されていた。彼らの言い分はこうだ。

 「ベルサイユの傑作は、ルイ14世の時代のままの状態で見るべきものである」

 「ムラカミの展覧会をするのなら、王のアパルトマンではなく、ほかの場所でやればいい。それは『モナリザ』の唇に色を塗るような行為だ」

 とはいえ、展覧会は無事に始まり、メディアでも大々的に取り上げられ、賛否両論あるものの、既に多くの人々の目に触れるところとなっている。

ローラン・ブリュネ氏

 「ここはフランスですよ。抗議には慣れっこだ」

 ベルサイユのスペクタクル部門のディレクターであるローラン・ブリュネ氏は語る。

 「いつも何かに対して反対だし、すねたり、ふくれたり。それは会話としての、討論という形での表現方法の1つです」

 それに、この手の抗議は今回が初めてのことではない。

 2年前、ブリュネ氏のボスであるプレジデント、アヤゴン氏の主導で、ベルサイユ宮殿が初めて大々的なコンテンポラリーアートの展覧会をすることになった時、第1回のアーティストとして、米国人のジェフ・クーンスを招いたのだが、その時もまた大論争になった。