北京や上海のような主要都市は、開発政策の成功を体現している(写真は上海 (c) Can Stock Photo

 9月初旬、筆者はほぼ10年ぶりに中国を訪問した。前回の訪問からこれほど時間が経っていたため、中国が繁栄したところ――そして、引き続き苦労しているところ――を見て取るのは容易だった。

 中国の主要都市は、鄧小平が1980年代に着手した開発政策の目覚ましい成功を体現している。

 こうした都市はわずか20~30年で極度の貧困から救い出された数億人の中国人の大半が暮らす場所だ。

 北京と上海は、キラキラ光る超高層ビルが立ち並び、明るいネオンで飾られ、ますます国際化する市民で満ち溢れており、その規模と活力に圧倒されるほどだ。

 こうした活気のある都市の街頭に立つと、中国の国内消費の増加を示す最近の統計をより深く理解することができる。人々は最新の技術を使っており、国際的な高級ブランドの名前の付いたショッピングバッグを抱えている。彼らの繁栄は、ますます豊かになる中国人観光客が「爆買い」に勤しむ東京とソウルの小売りセクターにも反映されている。

ちゃんと機能しない一流ホテルの電話

 だが、筆者が抱いた近代的な資本主義経済の印象はすぐに、北京の一流ホテルのちゃんと機能しない電話によって汚された。ある米国人の友人は、恐らく日本政府の顧問としての筆者の役割のために、電話が盗聴されているのではないかと勘ぐっていた。

 このような主張は、もちろん、控えめに言っても確認するのが難しい。ただ議論の余地がないのは、北京訪問が終わった1週間後に、北京で買い物をするために使った筆者のクレジットカード番号が、ニューヨークの中国系スーパーでの買い物に使われたということだ。

 個人情報の窃盗は決して中国だけの問題ではないが、そのような経験は、中国の技術的な近代化は、規制とデータセキュリティーのインフラを上回るペースで進んでいるのかもしれないという印象を生む。