「誰にも邪魔されず気を遣わずものを食べるという孤高の行為。この行為こそが現代人に平等に与えられた最高の癒しと言えるのである」
こんな言葉に始まるテレビ東京のドラマ「孤独のグルメ」がSeason5に突入した。輸入雑貨商を営む主人公五郎が出先でめぐり逢う食の数々。
高級店でなくとも身近な食を心底堪能する心の声が食欲をそそり、見た後、つい登場店を訪れたくなる。実際、そうした者も多いことだろう。
食のテレビドラマは数多いが、どれも似たり寄ったり。そんななか、英国BBCの「The Trip」の個性が光る。
映画好きにはたまらないトーク
テレビシリーズは日本未放映だが、Series1の映画編集版『スティーヴとロブのグルメトリップ』(2010/日本劇場未公開)はDVDリリース、Series2映画編集版『イタリアは呼んでいる』(2014)は、今春、劇場公開された。
全編『ウェルカム・トゥ・サラエボ』(1997)などの社会派マイケル・ウィンターボトムが監督、スティーヴ・クーガンとロブ・ブライドン、芸達者な2人のコメディ・アクターが食リポ旅という「おいしい」仕事をする本人名義の主人公たちを演じる。
その会話は映画ネタ全開、マイケル・ケイン、アル・パチーノ、ヒュー・グラントなどなど、モノマネが矢継ぎ早に繰り出され、映画好きにはたまらない。旅番組的絶景も魅力だ。そして、有名レストランの絶品料理を食しながらも、ひたすらしゃべり続けるのである。
『料理長殿、ご用心』(1978)には、Maxim'sなど、パリ、ロンドン、ベネチアの有名レストランが数多く登場、食と殺人ミステリーの舞台となる。
グルメ雑誌を主宰する評論家マックスは、減量しなければ余命半年と宣告され、「この世の美味は体に毒。悪魔の誘惑で私の命を削る」と嘆く。
そんななか、マックス絶賛の有名シェフたちが次々殺害され・・・というミステリー仕立てのロマンチックコメディだが、そこには安くて早いだけの品質軽視のファストフード・チェーン経営者vs.カネにまかせた美食家といった構図もある。