今回は新興国のビジネスリスクシリーズ第4回として、日本企業の進出拡大傾向が顕著な大国、インドを取り上げてみたい。
極めて多様化した多民族国家
まず、インドの概要から見ていこう。インドは日本の約8.5倍の面積、約13億1105万人の人口を有し、面積で世界第7位、人口で世界第2位の大国である。人口は今後も増加を続け、2022年に中国を抜いて世界1位となり、2028年には15億人、2037年には16億人、2050年には17億人に達すると予測されている。また、19歳以下の若年層が全人口の38.2%を占めているなど、労働人口、消費拡大により今後も大きな経済発展が予測されている。
民族的にはインド・アーリア系72%、ドラビダ系25%、モンゴル系その他3%で、宗教的にはヒンズー教80.5%、イスラム教13.4%、キリスト教2.3%、シーク教1.9%等となっている。また、言語はヒンディー語41%、ベンガル語8.1%、テルグ語7.2%、マラーティー語7%、タミール語5.9%等となっており、連邦公用語のヒンディー語、準連邦公用語の英語の他、インド憲法では21言語が指定言語として明記されている。
そのため、インドは極めて多様化した多民族国家であると言える(民族および宗教については米CIAの"World Factbook" による)。
インドは連邦共和制をとっており、世界最大の民主主義国家と形容される。例えば、第2次世界大戦以降、南アジア地域で唯一クーデターなどによる非合法な政治改革を経験しておらず、常に選挙等の法的手続きを経て政権交代が実現されている点が特筆される。また、インドは1947年の独立以来、国内産業保護を中心とした社会主義的経済政策を基本としていたが、1991年の通貨危機を契機として、経済自由化に政策を転換し、それ以降、堅調な経済発展を遂げ、2014年のGDPは世界9位となっている。