数年前、韓国の検索サイト「NAVER」は、有名人の書斎シリーズという企画を作った。その際、最初に紹介された書斎が、小説家・申京淑(シン・キョンスク)さんの書斎だった。
吹き抜けの壁一面に整然と並べられている本棚、2階への本棚には梯子がかけられていた。また、ただ壁面を本で埋め尽くすのではなく、インテリア的にも美しく、個人の書斎と言うよりはどこかの図書館と見まがうような本の多さに感嘆したものだ。
先日、知人の作家と久しぶりに会ったら、シン・キョンスク氏の剽窃疑惑の話になった(韓国の「剽窃」は日本で「盗作」と訳されているが、韓国にも「盗作」という言葉があり、今回は剽窃=倫理的基準、盗作=刑罰に該当ということから、あえて「剽窃」をそのまま使うことにする)。
日本でもすでに報道されているので、ご存知の方も多いだろうが、韓国の有名女流作家が三島由紀夫の「憂国」の一節を盗作したという告発文が出たことに対する話である。
シン・キョンスク氏と言えば、韓国文学界でも有名な文学賞の終身審査委員を務める大御所。
出版すれば必ずヒット
また、本を出せばヒットを飛ばすベストセラー作家で、「母をお願い」などは米国や日本でも翻訳されている。さらに、女工から小説家へと転身し、夫は大学教授で文学評論家ということで、彼女自身のサクセスストリーも小説に劣らず有名である。
そんな彼女を告発したのは、韓国の詩人であり小説家であるイ・ウンジュン氏だった。
ネットで公開されるハフィントン・ポスト・コリア(6月16日付)に「偶像の闇、文学の堕落/シン・キョンスクの三島由紀夫盗作」というタイトルで、彼女が1996年に発表した「伝説」の一部分で三島由紀夫の「憂国」を剽窃していることを指摘した。
彼女は「憂国」だけでなく他の作品でパトリック・モディアノや丸山健二の小説の文章やモチーフ、雰囲気などを剽窃したという。