皆さんは、南アフリカの「アパルトヘイト」という言葉に、どんな印象をお持ちでしょうか?
正直なところ私自身は、長らくアフリカの問題に現実的な感覚を持つことができませんでした。2000年以降大学に呼ばれて海外との連携を担当するようになり、ルワンダ共和国大統領府の招聘で現地の学生を教える過程で、同地のジェノサイドについては等身大の理解ができるようになりました。
しかしアパルトヘイトは1990年代に終焉を迎えており、アフリカでもすでに伝説になり始めていました。いや、日本国内でのヘイトその他の風潮を見る時、むしろアパルトヘイトこを21世紀の日本が直視すべき歴史に違いない・・・。
そんなふうに頭では思っていたのですが、現実にサバイバーとお目にかかり、お話を伺うことができ、深い感銘を受けました。ざっくりとご紹介してみたいと思います。
手紙爆弾で失った目と両手
マイケル・ラプスレー司祭は1949年にニュージーランドで生まれました。
デズモンド・ツツ大主教と同じ英国国教会の修道者で、獄中のネルソン・マンデラ氏を精神的支柱として活動したアフリカ民族会議で屋台骨を支えた反アパルトヘイトの伝説的英雄の1人です。
1990年、マンデラ氏が27年に及ぶ獄中生活から解放された同じ年に「手紙爆弾」による暗殺攻撃を受け、両手と右目を失いながら一命を取りとめ、アパルトヘイトの全廃を指導されました。
日本語訳のついたラプスレー司祭の航跡をまとめた動画がアップロードされています。ぜひご覧頂ければと思います。
やがて南アフリカの政情は安定後しましたが、多くの人は様々なトラウマに悩まされ続けています。ラプスレー司祭ご自身の両手と右目も、決して元には戻りません。
そんな中からトラウマの克服を直視する「記憶の癒し」のワークショップが生まれました。現在は南アフリカ国内は元より、ルワンダ・ジェノサイドやホロコーストなど、全世界で「負の記憶」トラウマに苦しむ人々の元を訪れ、癒しの活動を展開しておられます。