また、企業のグローバル化においては、ビジョン・理念の確立は、戦略の確立という他にも、海外のローカルスタッフのモチベーションの向上、価値判断基準の付与等の効果もあり、極めて重要であることを認識すべきである。さらに、ビジョン・理念の確立においては、経営トップが強いリーダーシップの下、コミットする姿勢も重要である。
(2)任せる・モニタリング・信賞必罰
筆者はこれまでの経験を通して、海外子会社管理における本社の姿勢として最も重要なのは、①任せること、②モニタリングをすること、③信賞必罰を徹底すること、の3点であると考えている。
この中で、②の「モニタリングをする」においては、比較的、日本企業は体制が整備されつつあると言えるが、①の「任せる」と③の「信賞必罰を徹底する」においては、問題が多いように感じる。
まず、「任せる」部分においては、既述の「現地化を阻害する要因」で挙げたとおり、本社・海外子会社間の責任・権限が曖昧である点が挙げられる。つまり、どこまで任せるのか、任せられないのかが不明確であり、現地での経営の意思決定を遅延または消極的にする要因となっている。
また、信賞必罰についても、日本企業の場合には明確な方向性が示されないことが多い。既述の通り、本社・海外子会社間の責任・権限が不明確であることから、現地トップが積極的に経営を行うインセンティブを削いでいる傾向が見られる。現地トップが短時間で交代することが多いことも、これを助長していると言える。
海外子会社管理の継続的改善においては、本社側の、①任せて、②モニタリングをして、③信賞必罰を徹底する、という姿勢が極めて重要であるとの認識を持つべきである。
(3)グローバル人材の育成・管理
グローバル展開において、いずれの段階においても共通する重要な課題が、グローバル人材の育成・管理である。