東京証券取引所の人々に「一本取られた、先を越された」と思わせているのが、韓国取引所(KRX: Korea Exchange Inc.)の俊敏な海外展開だ。

新興国にこそ韓国を売り込め~証券取引所版

 KRXはつとに、ラオス、カンボジアが証券取引所を発足させるに際して全面的に関与し、自分のシステムを採用させることに成功している。

  8月11日付の日本経済新聞には、KRXがその余勢を駆ってであろう、(1)欧州復興開発銀行(EBRD)と、中央アジアや東欧の証券市場育成に向けた事業に協力して取り組む覚書に調印したこと(2)独自開発の売買システム供給を考えていること(3)取引所への出資、市場開発、上場商品開発などを、両者共同で手がけていくことを伝える記事があった。

韓国、総額13兆円の金融支援策を発表

韓国、ソウルの証券取引所〔AFPBB News

 いずれの場合も相手にするのは小さな取引所で、実入りは当面、それほど大きくない。しかしいかにも将来性を買う、というより、自分で育てに行くような試みで、のちのちの発展性と、それを睨んだ戦略性を感じさせる。

 そこで東証の人たちがやったに違いないことを筆者もしてみると、なるほどKRXの運動神経にはタンゲイ(端倪)すべからざるものがあった。

 すなわちKRXのウェブサイトへ行き「国際協力」の実績として掲げられた情報を見てみたら、新興国・市場との協力関係がとくに近年、勢いよく伸びていたのである。

相手国 相手機関 覚書 協力内容
トルコ イスタンブール証券取引所 01.10.18 開示原則や取引規制の改善、スタッフ交換など
ベトナム 国家証券取引委員会 06.10.20 コンサルティング、教育
カンボジア 経済財政省 06.11.20 取引所設立のための協力
カザフスタン アルマティ市地域金融センター 06.12.14 スタッフ交換、相互宣伝
エジプト エジプト証券取引所 07.05.31 投資家教育、広報などで協力
ラオス ラオス中央銀行 07.09.19 取引所設立のための協力
ウズベキスタン タシケント証券取引所 08.03.17 銘柄相互公開、ITでのコンサルティング
ベトナム ハノイ証券取引センター 08.11.14 ITでのコンサルティングなど
イラン テヘラン証券取引所 09.1.24 従業員訓練、取引システムの改善
ロシア サンクトペテルブルク国際商品取引所 09.6.23 情報通信技術向上など