都構想への反対は高齢化とパラレル
これは大阪だけの問題ではない。投票者のメディアンが60歳を超える傾向は国政選挙でも同じで、特に高齢者の多い地方の定数が多いため、高齢者が政策を決める傾向が強まっている。
今回の住民投票は、それを単純化してはっきり見せたという点で面白い。図2は各区の賛否を表した図だが、北部のビジネス街や官庁街では賛成、南部の住宅街では反対とくっきり分かれている。

注目されていた西成区は、65歳以上の高齢化率が37.2%で大阪市平均の24.2%をはるかに上回り、反対多数だった。平均を上回る生野区、旭区、大正区などの高齢区はすべて反対多数で、高齢化率と反対率に強い相関がみられる。
大阪都構想というのは他の地域の人には分かりにくいが、一種の町村合併である。大阪市に24ある区を5区にまとめて市の機能や財源を移譲し、大阪府と重複する機能は府に移管する行政改革だ。
よくも悪くもそれほど大きな改革ではなく、「大阪都」を創設したり市を廃止したりする必要もないのだが、反対派が「弱者切り捨て」とか「老人無料パスがなくなる」などとアピールしたことが、高齢者の危機感をあおって投票率を高めたのだろう。投票率は66.8%と、歴代2位だった。
これは単なる行政区画の再編なので、大阪市が決めればできるが、市議会が否決したため、住民投票をやることになった。橋下市長が「否決されたら政治家をやめる」と宣言したため、彼に対する信任投票のような形になり、自民党から共産党まで反対運動を展開した。かつての橋下氏だったら、これぐらいはね返したかもしれないが、彼のカリスマ的な魅力は薄れていた。