一方、需要サイドの課題としては、クリーンエネルギーを使うアプリケーションの開発や、クリーンエネルギーに必要なインフラの普及の問題です。
エネルギー革命を促した蒸気機関、内燃機関の発明
ただ実際は、この供給と需要の問題は一種の「卵が先か、鶏が先か」の問題でもあります。
つまり、クリーンエネルギーコストが下がれば、それを使うアプリケーションやインフラが普及するという議論があります。
その一方で、アプリケーションやインフラの普及が進まなければクリーンエネルギーの開発があまり進まず、コストが下がらないという議論も成り立ち、なかなか難しい問題です。
ただし過去のエネルギー革命の例を見ますと、石炭や石油の普及に貢献し、エネルギーの世代交代を促進させたのは、蒸気機関と内燃機関などの新たなアプリケーションの発明、改良が大きく寄与したと言われています。
今回のクリーンエネルギー革命のコストとインフラの問題を、電気自動車とインフラの充電ステーションを例にとって説明します。
日産自動車は、2010年12月より、世界初の量産型電気自動車「リーフ」の販売を予定しています。
インフラ整備次第の電気自動車
電気自動車の導入は、電力の需要を増加させます。 とりわけ長期的には、走行中にCO2を排出しない電気自動車の燃料となる電気のクリーン化も後押しすることになり、太陽光発電や風力発電などのリニューアブル電力の需要の高まりにも貢献するでしょう。
しかしながら現状においては、インフラである電気自動車を充電する充電ステーションの開発がまだ十分とは言えません。
電気自動車が市場に投入され、ある程度普及してくると、電気自動車用の充電需要が増え、充電ビジネスが事業として成立するようになり、充電ステーションへの新規参入が進みます。
そうなると充電ステーションの数が増加し、利便性が向上し、電気自動車の需要が増え、製造コストが下がり、さらに電気自動車が普及し、長期的にリニューアブル電力需要も増え、リニューアブル発電コストが下がるという好循環のサイクルが回り始めます。
この新しいエネルギーへの転換サイクルが回り始めるまで、電気自動車の例にあるように、どうしても時間がかかります。
クリーンエネルギーへの主役交代が本格的に起きるためには、供給コストの削減と、クリーンエネルギーを使うアプリケーションとインフラの開発がカギを握るのです。
ではどうすれば主役交代が起きるのか。次回は、ソーラー発電や風力発電、バイオ燃料など個別の技術について、その可能性と現段階の問題点を整理してみたいと思います。
■これまでの連載とこれからの予定
- 第1部 クリーンエネルギーで世界の覇権を取れ!
- 第1章 今のままでは日本は絶対に勝てない
- 第2章 100年に1度のエネルギー産業大転換
- 第2部 クリーンエネルギーの実像
- 第1章 化石燃料より安くせよ、激化する世界競争
- 第2章 産業としての特徴
- 第3部 グローバルビジネス最前線
- 第1章 グローバルビジネス、2つの顔
- 第2章 中国と米国の戦略
- 第3章 ステークホルダーの取り組み
- 第4章 最新エネルギー産業動向のインパクト
- 第4部 クリーンエネルギーと日本
- 第1章 世界のグリーン化は止まらない
- 第2章 日本の戦略
- 第3章 世界競争、待ったなし
あとがき