この夏は、児童虐待に関するニュースが途切れることはなかった。

 大阪市で3歳と1歳の姉弟が母親(23歳)に放置され、遺体で見つかった事件は記憶に新しい。

 他にも、1歳2カ月の女児を木箱に閉じ込めて窒息死させた監禁致死容疑で母親(21歳)と同居の男が逮捕されたり(7月24日、横浜市)、5歳の女児の首を絞めたなどの殺人容疑で母親(34歳)が逮捕される(6月30日、福岡県久留米市)といった事件が起きている。久留米で逮捕された母親は、子供を「洗濯機に入れて回したことがある」とも供述した。

 厚生労働省によると、児童相談所における虐待の相談件数は1999年度に1万件を超え、2009年度は4万4210件(前年度よりも1546件増)となった。

 また、厚労省が7月に発表した「子ども虐待による死亡事例等」に関する報告では、2008年度の犠牲者数128人中、無理心中以外の死者は67人。うち、3歳以下が7割を超える。最も多いのは0歳児の39人だった。

 心中を除くと、死因は身体的虐待が約8割で、約2割が育児放棄。加害者は実母が59%、実父が16.4%。加害者の心理状態は約4分の1が「育児不安」を抱えていた(実母の場合)。67%が地域社会との接触に乏しく、63%は居住自治体の「子育て支援事業」を利用していなかった。

 以上の内容は、毎日新聞(8月19日)夕刊の特集記事によるものである。

 児童虐待の件数については、以前は子供が直接被害に遭った場合だけをカウントしていたが、父親が母親に暴力を振るう場面を見せられた子供も間接的に虐待を受けたと見なすようになったため、10年前に比べて件数が急伸した。

 その分を差し引いたとしても、この数年、児童が虐待される事件は大幅に増えている。

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 「孤育て」という呼び方に象徴されるように、マンションの1室で、朝から晩まで子供と2人きりという状況に置かれた母親が、思い通りにいかない子育てに追い詰められて、子供を叩くうちにエスカレートして虐待に及ぶ「時代の病」というべきケースもあるだろう。

 ただ、傷害や死亡にまで至るケースでは、親が深刻な生活困難を抱え込んでいたり、精神疾患が原因の虐待が多い。

 中でも重大な事件に結びつきやすいのが、同居の男性(=内縁の夫)が絡む場合で、女性の連れ子に対して暴力を振るい、女性の方でも相手を繋ぎ留めるために子供を犠牲にしてしまうケースが目立つ。