本記事は3月20日付フィスコ企業調査レポート(ブイキューブ)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 寺島 昇
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アジアNo.1のビジュアルコミュニケーション企業を目指す
ブイキューブ<3681>の主力事業は、クラウドを使ってのWeb会議サービスを中心とした「ビジュアルコミュニケーション」であり、国内及びアジアで急速に事業を伸ばしている。Web会議だけでなく、オンラインセミナー、営業支援、遠隔教育などユーザーのニーズに適した幅広い製品を取り揃えているのが特色。
2014年12月通期の連結業績は、売上高で4,681百万円(前期比85.4%増)、営業利益で403百万円(同45.9%増)、経常利益で594百万円(同125.4%増)、当期純利益で261百万円(同13.7%増)となり過去最高業績を更新した。進行中の2015年12月期の連結業績は売上高で6,400百万円(前期比36.7%増)、営業利益で502百万円(同24.5%増)、経常利益で500百万円(同16.0%減)、当期純利益で267百万円(同2.0%増)と予想している。ただし、2015年12月期は事業拡大加速フェーズと捉えて市場の拡大とシェアの拡大を急ぐため、利益より売上高拡大を重視した展開を考えており、上期の各利益はゼロを予想し、かなり下期偏重の利益予想だ。クラウド型であることから、売上高さえ確保できれば達成は可能と思われる。
同社は中期成長戦略の柱として「国内シェアの拡大と潜在市場の開拓」「アジアを中心とする海外展開の拡大」「B2B2C型のプラットフォームモデルの展開」の3つを掲げている。国内、海外市場ともに依然として開拓余地が大きく、今後の進捗は大いに注目される。
Check Point
●国内Web会議市場で3割超えるシェア、7年連続トップを維持
●2014年12月期はPVC買収寄与などで大幅な増収増益を達成
●潜在市場に開拓余地、パートナー戦略や業界特化型サービスなど強化
会社概要
主力をWebソリューションからWeb会議へシフト
(1)沿革
代表取締役社長である間下直晃(ましたなおあき)氏が慶應義塾大学在学中にWebソリューションサービスを目的として設立した(有)ブイキューブインターネットが同社の前身である。その後、慶應義塾大学からの出資を受け、事業内容や社名の変更などを経て現在に至っている。現在の主力事業は「Web会議」を中心とした「ビジュアルコミュニケーション」であり、同事業でのアジアナンバーワンを目指して事業を拡大している。2013年12月に株式を東証マザーズに上場した。
クラウド型の法人向けWeb会議などのサービスが収益の柱
(2)事業概要
同社の事業を端的に言えば、「インターネットを経由したビジュアルコミュニケーションサービスの提供」である。この代表例として、Web会議サービス、Webセミナーサービスなどがある。このビジュアルコミュニケーションサービスを、クラウドを使って提供する「SaaS(Software as a Service)」(月額課金方式)が同社の主力事業となっている。以下が同社のビジネスモデルの概要である。
●Web会議の特色
以前から電話会議やTV会議などは多くの企業で利用されていたが、これらのサービスを利用するためには特定の機器が必要であり、その機器を設置してある場所でしか利用できなかった。これに対して同社が提供するWeb会議サービスはインターネットを介して提供されるため、ネットへの接続が可能な場所であればどこでも利用が可能である。さらに専用の機器や端末は不要で、一般的なPC、スマホ、タブレット端末などで利用可能である。すなわち、「いつでも、どこでも、誰でも」参加できるのがWeb会議サービスの特色であり、強みである。
●クラウド型ビジネスの特徴
同社はクラウド型を中心に事業展開を行っている。クラウド型事業の場合、よほど大きな中途解約がない限り、翌年度の売上高は前年最終月(12月)の月間売上高×12ヶ月に新規獲得分を加えた額となる。クラウド型のビジネスであることから変動費が少ないので、売上高が増加すれば、そのかなりの部分が利益に上乗せされる公算が大きい。損益分岐点を超えてからは、利益率が高くなるのがクラウド型ビジネスの特色と言える。
●収入の源泉
同社がサービスを提供するのは法人であり、個人とは取引を行っていない。取引先は中小企業から上場大手企業まで幅広く、特定の業種に偏っていることはない。最大参加人数によって月額料金が異なっており(5千円から数百万円までとかなり幅広い)、5万円~8万円が最も多い。したがって、契約企業数を増やす(積み上げていく)ことと、1社当たりの利用料を増加させることが同社の売上高の増加(業績向上)につながる。
利用顧客数は公表されていないが、一度契約すると途中解約する企業は少なく、大部分が契約を継続する状況にあるようだ。
現在では売上高の60%がクラウド型(月額課金型)となっているが、セキュリティの関係からクラウド型を敬遠する顧客もあり、これらの顧客に対しては専用サーバーを使った「オンプレミス型」、つまり「売り切り型」のサービスも提供している。オンプレミス型の価格はクラウド型の約3年分の利用料相当額のようだが、オンプレミス型でも保守契約は継続されるため、こちらも顧客数を「積み上げる」ことが重要である。
また、上記に加え、ハードウェアとソフトウェアを一体として取り扱う、電子黒板システムを含むアプライアンスの売上がある。連結子会社のパイオニアVC(株)(以下、PVC)が担う。
●主なコスト
同社の主なコストは、サーバー、通信回線(専用線)費、ソフト開発費、営業費用などである。サーバーは外部のデータセンターを活用しているが、一部は同社専用サーバーとして利用している。顧客(利用量)の増加に伴ってある程度サーバー料金も増加するが、規模が大きくなればなるほど売上高に対する比率は下がっていく。通信回線費用も同様で、売上規模の拡大ほどにはコストは増加しない。言い換えれば、売上高が損益分岐点を超えると、その後の売上高の増加は利益率向上につながる構造になっている。
一方、ソフト開発や営業費用などは「先行投資」的な要素があり、必ずしも規模(売上高)に比例しない場合もある。そのため計画によっては利益率向上の抑制要因になる。当面は先行投資期間として、これらのコストが増加する傾向にある。
なお、アプライアンスは、例えば、電子黒板システムでは大型液晶ディスプレイを仕入れて販売するため、売上高の増加に比例して、売上原価が増える。