正直あまり書きたい話題ではないのですが、このところいくつかの事件を目にして一度は言及しないわけにはいかないと思い、今回の話題を記します。
3.11哲学熟議、3.16哲楽遊戯と、年度末のまとめ公開行事を終えたあと、時間の大半を海外の仕事に取られてこの連載に1週間タイムラグができてしまいました。申し訳ありません。
そんな間にも世間ではいろいろ事件があり、犯罪の報道なども紙面で目にします。そこで国立大学の博士号を持った人の犯罪とされるものもいくつか読みました。
内容は様々で、研究の不正から、よく分からないのですが教え子とどうこうとか、ここで触れる気にもならない内容のものまで、ともかく複数、いろいろ目にした「博士の犯罪」。
私が思ったのは「学歴ロンダリング」と「基礎学力」という問題で、以下では個別の事件やそのゴシップ的な内容には一切関わらず、研究機関の抱える構造的な問題だけに焦点を絞って、改善策を含め建設的に考えたいと思います。
学歴ロンダリング問題
まず「学歴ロンダリング」と言われるポイントから考えたいと思います。日本では大学学部の学歴が就職その他に大きな影響を持ちます。
これは否定しがたい事実であり、例えば私が在籍する東京大学の場合、学部入試は非常に厳密ですが、大学院修士の入学はかなり「楽」で、大学院博士に至っては「容易」と言っても過言でないと思います。これらは学部入試と比較してという意味でご理解ください。
つまり、東大の学部に入ろうと思ったら、まず1次の共通テストで多くの科目を受験する必要があります。ここで十分な点が取れなければ2次試験を受けさせてももらえません。