2014年11月の日中首脳会談における「4点の認識共有」の存在にもかかわらず、中国の軍事的台頭とその海洋における高圧的な対外姿勢は相変わらず日米および地域の安全にとって深刻な挑戦であり続けている。
中国の国防予算は毎年のように前年度比2桁という高い水準の伸び率を示し続けているが、米国の国防予算は削減圧力の結果、今後も長期にわたって横ばい傾向となることが予測されている。日本にしても財政難の影響で、たとえ安倍政権の下でも防衛関係費の大幅増額を許容する状況ではないことは自明である。
つまり、日米はやがて物量面で中国の軍事的・政治的・心理的な圧力に対抗できなくなる恐れが否定できない。事実、こうした優位を背景に、中国は海洋における高圧的姿勢を強めている。2013年11月の東シナ海における防空識別圏(ADIZ)設定は記憶に新しいし、南シナ海でもスプラトリー諸島をはじめ実効支配する島嶼や暗礁で埋め立て作業を進めており、やがては航空施設を完成させて、南シナ海でもADIZ宣言を行うものと見られる。
以上のことから、日米の識者および専門家は現在、地域のバランスがそう遠くない将来に中国に有利な形に変化することを前提とした戦略構築についての議論を始めている。日米は、やがて地域において中国よりも劣弱な立場に転落する事実を受け入れなければならないのだ。
こうした問題意識を抱きつつ、筆者は2月の終わりに米国のワシントンDCを訪問した。そこで戦略予算評価研究所(CSBA)、新米国安全保障研究所(CNAS)、戦略国際問題研究所(CSIS)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院(SAIS)、RAND研究所ワシントンDCオフィス、カーネギー国際平和財団(CEIP)、長期戦略研究グループ(LTSG)などのさまざまなシンクタンクや財団、大学の名だたる米国の識者・戦略家たちと意見交換を行う機会に恵まれた。
そこから得た知見は非常に有益なものであった。そこで、これから何回かの連載を通じて、筆者が米国の戦略家たちにインタビューした内容についてご紹介したい。その内容は、米国の第一線の識者や戦略家たちが現在、日米のあるべき戦略について、何を考えているかについての貴重な資料となるはずである。