日本学術会議は2月17日に、使用済み核燃料(核廃棄物)についての検討委員会で「核廃棄物の処分方法が決まるまで原発を再稼動するな」という提言案をまとめたが、その奇妙な内容が話題を呼んでいる。
確かに日本は1万7000トンの核廃棄物を抱え、その最終処分の方法が決まっていない。これはエネルギー政策のみならず安全保障上も重要な問題だが、原発の再稼動をやめても解決しない。「原発ゼロ」にしても核廃棄物はなくならないのだ。
なぜ「10万年後のゼロリスク」が必要なのか
核廃棄物は、どこの国でも頭の痛い問題である。特に日本は核廃棄物を核燃料サイクルで再処理する方針をとっているが、青森県・六ヶ所村の再処理工場が稼働しないため、各原発の使用済み核燃料プールに貯蔵された廃棄物があふれそうになっている。
これが今回の学術会議の提言の理由だが、それは解決策になっていない。彼らは「暫定保管」という新方式を提案しているが、これは使用済み核燃料を容器(キャスク)に入れて空冷で保管する「乾式保管」というもので、むつ市の中間貯蔵施設とまったく同じだ。
検討委員会の今田高俊委員長は、核廃棄物を地下300メートルに埋める「地層処分」に反対して「10万年後の安全が保証できない」というが、これは反原発派にありがちな「ゼロリスク幻想」だ。プルトニウムより経口毒性の強い重金属は水銀、砒素、六価クロムなど他にもあるが、海水中に一定の基準で排出されている。
核廃棄物の放射能は減衰するので、100年ぐらいでほぼ無害になる。万が一、地震で容器が破壊されても、水銀とは違ってプルトニウムは地下水に溶けないので、食物連鎖で生物に蓄積される心配もない。プルトニウムだけに10万年後のゼロリスクを要求する科学的根拠はないのだ。