2014年12月14日。「ABUデジスタ・ティーンズ」の本番収録の日がやってきた。
これまでABUデジスタ・ティーンズは、NHK主導で番組が制作され、NHKのスタジオで収録されてきた。しかし、4回目を迎える今回は、初めて日本以外の国、タイの国営テレビ局(NBT)がホストとなり、NBTのスタジオで収録・制作されて、アジアから参加する各国へと配信されることになったのである。
初めて日本以外の国がホストする国際共同制作
つまり、カンボジアが初参加となったABUデジスタ・ティーンズは、もちろんカンボジアにとっての「初体験」なのであるが、同時に、NHKが諸々の制作内容について指導はするものの、タイNBT局にその制作を任せる、という日本側にとっても初の「他流試合」とも言うべきものなのだ。
色々波乱が起こりそうなのである。
というのも、前回紹介したように、当初予定していたスタジオ演出は直前になってひっくり返り、カンボジアの登場シーンでは、代表チームSharkに内緒で撮影した、彼らの友人たちからのメッセージビデオをサプライズで紹介することになっていた。
それだけではない。
私がカンボジアを出発する直前には、NHKのチーフプロデューサーから、細かい変更事項が書き込まれ、タイNBTとの打ち合わせが予定通り行われないため、最後の確認が取れないことなどが綴られた長いメールが届いた。そして最後のとどめには、悲鳴に近いこんな一節があった。
「参加を予定していたモンゴルが、やっぱりお金の都合がつかないと、出場を取りやめると言ってきました・・・」
それぞれ参加国には事情があるとはいえ、すべて準備万端で収録や取材を進めていく日本では考えられないような「ドタキャン」である。
ま、これがアジアン・スタンダードだからなあ、などと、カンボジアでの2年半の任期終了をあと1週間後に控えた私は、知ったような納得をしてみせたりしたのであるが・・・。
収録前日、バンコクで顔を合わせたそのチーフプロデューサーが、私にこう言った。「モンゴルチームがね、お母さんとバンコクに来る用事ができたので、突然来るってことになったんですよ。しかも予定していなかった通訳の人も連れて」
本当に、アジアでは何でもあり、なのである。
そして収録当日の朝、我々は収録場所であるNBTにバスで向かった。