マット安川 衆院選後、最初の放送となる今回、ゲストに作家で元外務省主任分析官の佐藤優さんを迎え、安倍政権の今後の展開分析やロシア情勢などについて詳しくお聞きしました。
安倍首相の唱える「強い国」とは何か、姿がはっきり見えない
元外交官、文筆家。インテリジェンスの専門家として知られる。第38回大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した『自壊する帝国』 の他、『佐藤優の10分で読む未来―戦争の予兆編』『佐藤優の10分で読む未来―新帝国主義編』『「ズルさ」のすすめ』『日本国家の神髄』『紳士協定 私のイギリス物語』など著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)
佐藤 今回の衆議院選挙について、自民・公明の圧勝と言われていますが、正確に言うと自民党は議席を2つ減らしています。公明党は4つ伸ばした。ですから自民党は横ばいで、公明党は勝ったと。あと共産党も勝ちました。
全体の流れとして見ると、今回の投票率は52.66%で史上最低で、そうすると組織選挙になる。公明党の支持母体である創価学会、民主党の支持母体の1つである連合、それから共産党という3つの組織がしっかりした党が競争して、組織が一番強い創価学会が勝ったということだと思います。
私は、創価学会にせよ共産党にせよ、一所懸命選挙運動をやっていることを非難するのはおかしいと思います。
選挙で政治を変えていくというのは民主主義の根本ですから、公明党に反発がある人、共産党に反発がある人は、投票に行って別の政党に1票入れればいい。それ以上でもそれ以下でもないんじゃないかと思います。
第3次安倍政権ですが、その行方についてはよく分かりません。安倍(晋三、首相)さんが何を考えているのかよく分からない。
例えば7月に閣議決定されて集団的自衛権が部分容認されたことになっていますが、ではなぜ自衛隊はイラクに行かないのか。政府は非軍事支援しかしないと言っている。ひと昔前までは、中東の紛争に送っていたじゃないですか。
つまり、あの閣議決定によって、かえって送れなくなっているんです。閣議決定の文書は、簡単には自衛隊を送れないという内容になっている。そういうことを考えると、安倍さんが何をやりたいのかよく分からないですね。
安倍さんは心の中では強い国をつくりたいと思っている。それは集団的自衛権や靖国参拝などいろんな形で出てくるけれども、それ全体が国家戦略としてきちんと位置づけられているかというと、あまりそんな感じがしません。
安倍首相は対韓国・中国外交に真正面から取り組むべし
日中関係はどう変わるのか。中国の対日姿勢はあまり変わらないと思います。安倍さんが交代するということであれば、中国は何か仕掛けてきたと思いますが、安倍政権の続投で日中関係も横ばいだと思います。
ただ、それはあまりいいことではない。最近の日本外交はちょっと中国に譲り過ぎていますからね。