長寿世界一を誇る日本、その足元が危うい。多くの高齢者が所在不明、自治体は「生存確認」業務などという大事故かはたまた戦争でしかお目にかからない作業に追われる羽目になっている。
欧米、中国、韓国がそろって長寿国、日本を糾弾!
ここぞとばかり「長寿大国日本の幻想」などと、欧米中韓メディアは揶揄しているが、現代高齢化社会の新たなる、そして深刻な問題が浮き彫りにされた形で、現状の解明と早急なる対策が求められるところだ。
いつの世でも人類にとって永遠の夢、それは不老長寿の理想郷ユートピアである。
フランケンシュタインのような人造人間という科学に理想を求めるマッド・サイエンティストもいれば、世事から隔絶された「地上の楽園」の存在に求めるロマン派もいる。
現実的には、精神世界に求める宗教がその役割を担うことになるが、19世紀末、粗悪な環境に喘ぐ労働者階級の現状を嘆いた多くの知識人たちは社会主義の思想にユートピアを重ねていた。
近い将来、人間の英知でそんな世界が実現すると考えていた1人に「透明人間」「タイムマシン」などでSF小説の祖と言われるH・G・ウェルズがいた。
英国とロシアのグレートゲーム最前線、ヒマラヤ
若き日のウェルズが自分の不注意から実在の連続殺人魔「切り裂きジャック」をタイムマシンで現代の米国に送ってしまい、ユートピアに殺人鬼を送り込んだとの自責の念にとらわれるフィクション『タイム・アフター・タイム』(1979)ではその時代のユートピア思想と現代社会のギャップが皮肉たっぷりに描かれている。
20世紀に入り、ヨーロッパアルプスをはじめとした近隣の難峰を次々と制覇し、長い間、西欧人にとって天空の地であったエベレストを頂点として君臨する高峰にも西欧の登山隊は足を伸ばし始める。
英露のグレートゲームの最前線でもあったヒマラヤの地を極めることは、政治的にも意味の大きいものだった。
大恐慌に見舞われ世界が不幸のどん底にあった1933年に英国の小説家ジェームズ・ヒルトンが発表した「失われた地平線」には、ヒマラヤのどこかにある不老不死の人々の暮らす物質文明とは無縁の理想郷シャングリラが描かれている。