在来種の野菜。左から壬生菜(京都の伝統野菜)、遠野かぶ(岩手)、春菊(長崎)、大白(鹿児島)。いずれも独特な色と歯触りがある。実が詰まっているので煮くずれしにくい。大白は「幻のさつまいも」とも。

 「在来種」と呼ばれる野菜の品種がある。その土地で生まれた種を採取して代々育てられてきた種だ。個性的な形や味という特徴をもつ。

 しかし、在来種の大量生産や流通は難しく、栽培に手間もかかる。現在の主流は大量生産に向いている「F1」と言われる種。味は良いが大きさも形も不揃いな在来種の数は減少している。

 在来種の生産状況や新たな取り組みについて見ながら、在来種の意義を問い直してみたい。

「F1」隆盛で肩身の狭くなった在来種

 いま市場で流通している野菜のほとんどは、「F1(1代雑種)」のタネからできたものだ。F1とは、交配によって作られた新しい品種の1代目を意味する。異なる形質をかけあわせると優性だけが現れるメンデルの「優性の法則」を利用し、まったく同じ形質の野菜ができるように品種改良されたものだ。