経営力がまぶしい日本の市町村50選(33)
東京30キロ圏の武蔵野台地に位置する埼玉県三芳町は、今なお農業が主要産業の町である。平成26年9月末現在の人口は3万8263人。
埼玉県有数の財政力を誇る三芳町
江戸時代から農用林として育成された林や屋敷を囲む林が、今も武蔵野を代表する景観や開拓された地割の様子を残していることから、「人と自然が織りなす日本の風景百選」 (2005年)、「にほんの里100選」(2009年)にも選ばれている。
「川越いも」として有名ないもは、実は三芳町上富地区を中心とする名産品で「富(とめ)の川越いも」としても販売されている。
かつては純農村であった三芳町も高度成長期には目覚ましい変貌を遂げ、東に国道463号、西に関越自動車道が通る恵まれた交通環境を生かした工業団地や流通拠点の倉庫群が連なる。首都圏のベッドタウンとして人口も緩やかながら増加傾向にある。
これらを背景に固定資産税や町民税による町税収入が豊かであるため、1993年から18年間、財政力指数が1.0を超え続け、地方交付税を交付されない埼玉県有数の不交付団体でもあった。
そんな三芳町であるが、今年は三富新田の世界農業遺産への登録へ向けて町全体が盛り上がっていた。「世界農業遺産(GIAHS: Globally Important Agricultural Heritage Systems、ジアス)は、国連食糧農業機関(FAO)が2002年から開始したプログラムである。
その目的は、「社会や環境に適応しながら何世代にもわたり発達し、形づくられてきた農業上の土地利用、伝統的な農業と、それに関わって育まれた文化、景観、生物多様性に富んだ世界的に重要な地域を次世代へ継承すること」である(三芳町公式サイトより)。
環境と経済を両立できる優れた循環型農法
世界遺産は、遺跡や歴史的建造物、自然などの「不動産」を登録保護するものである。一方で世界農業遺産は、次世代に継承すべき伝統的な農業の「システム」を認定し、その保全と持続的な利用を図るものであり、「過去の遺産」ではなく、環境の変化に適応しながら進化を続けている「生きている遺産」とも言われている。
これまでに世界で31のサイトが認定されており、それぞれ地域固有の取組が行われている。日本でも2011年に先進国として初めて佐渡と能登が、2013年には静岡、阿蘇、国東が新たに認定され、現在、国内では5地域が認定されている。
たとえば、新潟県の佐渡地域は、金山の歴史が生み出した棚田などの水田で、冬期湛水など「生きものをはぐくむ農法」とその認証制度を推進。また、農業は、能、鬼太鼓などの農村文化の発展につながり、佐渡独特の自然、風景、文化、生物多様性を保全している。