日本人にとっての「アメリカ人消費者」のイメージは、刹那主義的にクレジットカードで最新の家電や流行の服を手に入れ、週末には郊外のショッピングセンターで山のように食材や家庭用品を買いこむ──と言ったところだろうか。
でも、それで暮らしていけたのも過去の話。サブプライムローン問題や金融危機の荒波に揉まれて、さすがの「お買い物大好き」アメリカ人も、倹約の大切さ、将来に備えて蓄えることの意味を真剣に考える必要に迫られ、「賢い消費者」への道を歩き始めている。
そんな時流を反映してか、日々のお金の出入りや、貯金やローンの残高などをネット上で1カ所に集約して管理できる「口座アグリゲーションサービス」が相次いで登場、会員数が急増している。
預金やカード残高、老後の資金の積み立てまで一括管理
アメリカ人は平均して11の金融サービス会社に口座を持っている。30代独身者を例に取ると、財布の中にクレジットカードは5枚。リボルビング払いで返済中の買い物残高は約4000ドル(1ドル=86円換算で34万4000円)。月々240ドル(同2万640円)の自動車ローンと、大学や大学院の学費の返済(米国では大学の学費は本人が負担することが珍しくない)が280ドル(同2万4080円)といったところだろうか。預金は、当座預金や定期預金のほか401kなどの退職積立金に分散していて、株や投資信託の証券口座も持っているのが一般的だ。
アメリカではクレジットカード会社の請求ミスも珍しくないし、個人から受け取った小切手が不渡りになることもある。それぞれのクレジットカードの引き落とし日や、預金残高が十分にあるか、底値で買った株の売り時が近づいていないか、老後の資金は潤沢か──全部に気を配るのは容易なことではない。金融アグリゲーションサービスを利用することで、そんな面倒が一挙に解決する。
金融アグリゲーションサービスの中でも、特に人気の高いmint.comを例にとって説明しよう。
mintにアクセスすると、「Free Personal Finance Software, Budget Software, Online Money Management and Budget Planner(無料の個人資産管理ソフトウエア、予算ソフトウエア、オンラインマネー管理と予算プランナー)」という説明が出てくる。
従来からある家計簿ソフトウエアの相場は30~80ドル程度だが、それを「無料」で利用できるのが嬉しい。しかも、家計簿ソフトよりも、便利で機能も充実しているのだ。
マネー関係のサイトは、小さなゴシック文字でページが埋め尽くされ、味もそっけもない事務的な内容がほとんど。しかし、mint.comは、名前の通りにミントの葉のイラストをあしらった可愛らしいロゴに、全体の色調もグリーンで統一した爽やかな印象。(ちなみにmintには「造幣局」の意味もある)
サイト内の色々なページを覗いてみると、丸みを帯びたフォントの大きな文字でポイントを分かりやすく表示した上で、詳細な説明にはグラフやイラストを多用するなど、数字が苦手な人にもとっつきやすいデザイン。ピンクの子ブタの貯金箱や、賢くお金を貯めていずれは行ってみたい憧れのリゾート地の写真を散りばめるなど、遊び心もたっぷりだ。