日本は拉致問題で北朝鮮にまた踊らされた――。

 北朝鮮工作員による日本人拉致事件の解決を目指して、日本は必死の努力を続けている。どんな機会をも逃さず、全力で進もうとする。ときには圧力を、ときには対話を、という硬軟両方の手法で解決を目指す。

 しかしながら今回の日本政府代表団の平壌訪問は、またして北朝鮮の策略に乗せられてしまったようである。

調査の進展状況さえも明らかにされず

 10月28~29日に平壌で開かれた日朝政府間の協議はなんともお粗末だった。

 協議の舞台は北朝鮮側がいかにも急ごしらえで作ったような映画セットを思わせる施設だった。テレビに映る建物の内部は、日頃、人間が働き、使われているという気配がゼロだった。入り口のドアの上にはわざとらしい金色の看板が掲げられ、「特別調査委員会」「出入国管理局」といった英語の文字がわざとらしく記されていた。

 北朝鮮側の代表3人は仰々しい軍服に身を包んで威圧的な大きな軍帽をかぶって現れた。新設された特別調査委員長の徐大河氏の発言は、明らかに報道陣を意識したような芝居がかったものだった。この会談には、日本の多くのニュースメディアだけでなく、諸外国のメディア代表も招かれた。北朝鮮当局側はメディアの対応に細心の注意を払っていた。