日本との拉致関連の協議や日本海へのミサイル発射などで、北朝鮮の動きがまた一段と国際的注視を集めている。そんな中、米国の国家安全保障会議(NSC)や中央情報局(CIA)で北朝鮮問題に専門に取り組んできた気鋭の専門家が、米国や日本は、金正恩政権を崩壊させることこそ政策目標とすべきだという大胆な提言を発表した。関係各国が連帯して北朝鮮への制裁を強化すれば、金政権の崩壊も十分に可能だという。

 この提案を論文の形で発表したのはコロンビア大学東アジア研究所の上級研究員、スー・ミ・テリー氏であ。同氏は、2001年から2008年までCIAで上級アナリストとして北朝鮮の政治や経済の動向を追い、その後、国家安全保障会議(NSC)に移り、アジア担当部長としてブッシュ、オバマ両政権の北朝鮮政策形成に関わった。国家情報会議(NIC)の東アジア担当副部長を務めた経験もある。

 テリー氏は外交専門誌の「フォーリン・アフェアーズ」(2014年7、8月号)に「統一され、自由な朝鮮」と題する論文を発表した。その中で、米国や日本、韓国は北朝鮮の金正恩政権の存続を前提とする現在の「ソフトな封じ込め」政策を止めて、同政権の崩壊を導く強固な制裁強化政策を取るべきだと提唱している。

 この雑誌論文は多方面の関心を集め、その要旨が「ニューヨーク・タイムズ」(6月16日付)にも寄稿の形で掲載された。その寄稿論文の見出しは「北朝鮮を崩壊させよ」という手厳しい表現だった。

米国、韓国、日本だけでなく中国にもメリットがある

 同論文はまず米国、韓国、日本などの現在までの北朝鮮政策を以下のように批判する。

 「北朝鮮はいまや4回目の核実験の準備を進め、弾道ミサイルの開発もさらに進め、対外的な脅威を高めている。それらの危険なボタンに指をかけているのは31歳の金正恩であり、彼は前の指導者よりもさらに気まぐれに見える」