マット安川 ゲストに中国ウォッチャー・宮崎正弘さんをお迎えして、香港のデモから中国の国内情勢を伺い、台湾や日本政府の動き、また中国経済の危機的な状況についても、解説いただきました。
香港人の意識に変化、カネ儲けだけでなく政治にも関心
評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。近著に『オレ様国家 中国の常識』『2012年、中国の真実』『中国が世界経済を破綻させる』など。メールマガジン『宮崎正弘の国際ニュース・早読み』を発行。(撮影:前田せいめい、以下同)
今回の香港の民主化デモは、驚きでした。香港人は政治に無関心で、目の前のカネ儲けにしか興味がなく、カネが貯まったら海外に移住する。それが香港人の夢でした。
ところが、政治に関心を持って、なおかつ世界中がビビっている中国共産党に正面から文句を言う若い新人類が出てきた。しかも、よく見たら大学生ではない。大学生もいますが、多くは高校生です。
香港はエリート大学が少なく、海外に留学する人が多い。その人たちはだいたい香港に戻ってこないので、香港の学生パワーの主体は高校生になるんです。
彼らはなんというか、アニメを見て育った正義感の強い若者たちという感じで、物怖じしないし、恐れを知らない。そんな彼らが動き出したら、後ろから市民がついてきた。
集会を開くと10万、20万人と集まる。6月に行われた行政長官選挙に関する住民投票では、約80万人が投票しました。香港の人口は正規で約500万人、そのうちの80万人ですから、政治意識がずいぶんと変わって高くなってきています。
中国共産党による支配に反発、特に経済的な不満が大きい
その背景としては、中国共産党によるマスコミ支配から、資本の支配も始まり、それに対する不満があります。最大の不満は、マンション価格の高騰です。
香港市民はみんな汲々と働いています。金持ちも一部にはいますが、1つのマンションに3世帯が同居して暮らしている人たちも少なくない。そこにいま大陸から中国人がやって来て、マンションを買いあさっている。
その影響で香港のマンション相場は東京の2倍になっています。それで庶民が怒っているわけです。我われは完全に疎外されていると。