中国は外交面で日本に対して意外と弱い立場にあり、近く日中首脳会談にも応じてくる気配が濃厚だ――。

 こうした分析と予測が、ワシントンのベテランの中国研究専門家によって明らかにされた。

 中国指導部は、アジア外交では日本だけでなく東南アジア諸国や北朝鮮とも問題を抱え、日本との関係を緊張状態のままにはできないという判断を強めてきた、というのである。もしそうであれば、日中首脳会談の開催に前提条件をつけてきた中国側に対して、その条件を認めないできた安倍晋三首相の外交姿勢も間違ってはいなかった、ということになりそうだ。

 この分析を明らかにしたのは、現ジョージワシントン大学教授のロバート・サター氏である。サター氏は筆者のインタビューに応じて、最近の中国の外交姿勢への見解を述べた。その中で、特に中国のアジア外交や対日政策について語った。

 サター氏は米国政府の国務省、中央情報局(CIA)、国家情報会議(NIC)などの各機関で対中政策形成や中国情勢分析を専門にしてきた超ベテランの中国ウォッチャーである。米国政府での中国への取り組みだけでも約30年の経験があり、民主、共和両党の政権に勤務した党派性の薄い中国専門家として知られる。

 サター氏の中国分析については当コラム「『中国の挑発は先手を打って食い止めよ』受け身のオバマ政権に米国で叱咤の声 中国研究者が『弱点を突く』中戦略を提言」(2014年8月13日)でも紹介した。

アジア外交の手詰まりを懸念する中国

 さて、中国の対日外交政策に関していま最も注目されるのは、中国の習近平国家主席と日本の安倍晋三首相との首脳会談がいつ、どのように開かれるか、である。

 安倍首相は、2014年11月に北京で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議に出席するため訪中する。その際、習主席が個別に、しかもきちんとした形で会談するかどうか、が焦点となっている。