ワシントンの政策形成の論議の場で、米国の対中戦略をこれまでの受け身型から先手を取る方式へと変えるべきだとする大胆な提案が示され、オバマ政権内外で波紋を広げ始めた。

 アジア地域で中国が挑発的な行動を取ったらそのたびに対応策を練るという、従来のオバマ政権の姿勢を根本から改め、中国の弱点を標的として、積極果敢に先手を打って抑止していくべきだとする新提案である。

米国の批判に動じない中国

 米中関係はこのところ険悪化し、米国側でもその対応に手詰まりの観が強まってきた。

 中国は南シナ海で海洋領有権の野心的な拡大策を取り、ベトナムやフィリピンに軍事がらみの圧力や威嚇をかけている。中国が新たな膨張の動きを取るたびに、米国はその動きを批判し、多様な対応策を取る姿勢を見せる。だが中国の膨張は止まらず、スローダウンもしない。

 東シナ海でも中国は一方的に防空識別圏(ADIZ)の設置を宣言した。尖閣諸島周辺では頻繁に日本の領海に艦艇を侵入させる。自衛隊の艦艇に対し、実弾攻撃の前段階となるレーダー照射をする。自衛隊機に対しても戦闘機を異常接近させて恫喝する。

 中国のこうした行動は、明らかにアジアでの米国の安全保障態勢へのチャレンジでもある。

 中国はアジアで着実にその影響力を広げつつあり、同時に米国とその同盟国との絆をも弱体化させている。アジア全体における米国の安全保障上のパワーを削り取っているとも言える。