今回は、前回に続いて、私がかつて目撃した交通事故について書くつもりでいた。しかし、残暑が厳しい折に腹立たしい話題を続けるのも剣呑なので、180度趣向を変えた内容のコラムをお届けしたい。
この2~3カ月、私は少年野球の試合で塁審を務めている。私が打ち込んだスポーツはサッカーなので、野球については草野球のプレー経験しかない。40年来の阪神タイガースファンとしてプロ野球を見続けて、それなりに知識は蓄えられているが、自分が審判をすることになるとは夢にも思わなかった。もちろん審判をするライセンスも取得していないため、小学5年生の息子が所属するチームの練習試合で1塁か3塁の塁審を務めるだけである。
審判の中で一番重労働なのは主審で、次が2塁の塁審だが、1塁や3塁の塁審もなかなか大変である。7イニング制でも、試合時間が2時間を超えることはザラだし、攻撃の間はベンチに下がれる選手と違い、審判はグラウンドに出ずっぱりときている。夏の盛りに2時間も日差しを浴び続けるのは実に辛かった。しかし、審判にはそうした辛さを上回る面白さがあることに私は気づいた。その面白さを一言で言えば、判定=ジャッジメントをする難しさと達成感ということになるだろう。
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父親として息子のチームを応援している場合、相手のバッターが1、2塁間にゴロを打ったとする。私の息子はセカンドなので、その方面に打球が飛んだだけで私は息を飲み、「頼むからしっかり捕球してくれよ」と祈る。幸いグローブに収まったら、次は送球となり、「どうか暴投をしませんように」と、これまた祈る。せっかくいい送球がいってもファーストが落球することだってあるのだが、アウトを取れなかったことを残念に思いつつも、息子はちゃんとプレーできたのだからと胸を撫で下ろすというような親バカ丸出しの応援になってしまう。
それに対して、1塁の塁審を務めている時は気構えがまるで違う。1塁ベースから2~3メートル後方のライン際に立ち、ピッチャーがマウンドで投球動作に入ろうとするタイミングで両手を両膝に突く。内野にゴロが飛んだ場合、すぐにラインを越えてフェアゾーン内に入り、右目で打球を捕ろうとする野手の動きを追いながら、左目で1塁に向かって走ってくる打者走者を見る。捕球した野手が送球の体勢に入ったら、視線を1塁手に向けて、送球されたボールが1塁手のグラブに収まるのと、打者走者が1塁に達するののどちらが早いかを判定をする。