海外で活躍する日本人の政治学者は総じて少なく、日本からのサポートも理解も決して多くない。しかし海外で努力を続け、近い将来日本の学問へ貢献するであろう若手の日本人はいる。本稿ではイギリスで開催された学会で見たことやアメリカの政治学の現状を伝えることで、これから世界を目指す日本人の政治学者を応援したい。

エジンバラのヨーロッパ政治学会で見たこと

 6月下旬、ヨーロッパ政治学会(European Political Science Association)で研究発表をするためにイギリスのエジンバラに飛んだ。日本の外交・安全保障政策と、冷戦後の文明間の戦争に関する論文2本を発表するためである。学会はエジンバラの中心地に位置する長い歴史を誇る建物で開かれた。

学会会場の1つであった Royal College of Physicians of Edinburgh(著者撮影、以下同)

 2010年に設立されたこの学会はまだ4度目の開催ということもあるのだろう、毎年数千人の参加者を集めるアメリカ政治学会(American Political Science Association)と比べて規模が小さい。3日ほどの開催期間に論文を発表した研究者は合計600人ほどだった。国防総省からの参加者も知る限り私1人であった。

 参加者の多くは欧米人だったが場所を考えれば驚くことではない。ただ顕著に思えたのは、プログラムに登録されていた日本人発表者はほんの数名であったことである。それも全員が海外で博士号を取得し海外で教鞭を執る、助教授・講師レベルの若手であった。恐らく発表をせずに学会に聴衆として参加した方もいたのだろうが、日本で勤務する研究者は1人も発表していなかった。

 その理由には幾つかある。日本の国際関係学の教授の多くは海外の学会で発表しない。以下で述べるように、日本であまり政治学が浸透していないことと、日本と海外の政治学のシステムにいくつかの違いがあるからだろう。

 学会ではヨーロッパの選挙制度から移民問題、政治経済からデータ解析と分析手法まで多くの論文が発表された。対照的にアジアに関するパネルは少なかったという印象を持った。日本に直接関係する論文は私の論文のみだったようだ。

 面白いことに、今回は開催地がスコットランドということもあり、独立運動が進むスコットランドの政治に関わるパネルもあった。事実、私の訪英中も独立運動の話題が新聞を騒がせていた。

 8月1日に締め切られた世論調査では独立賛成が40%で反対派が46%につけるなど独立の動きはいま一つだが、浮動票は14%に上り、9月18日の国民投票まで政治の長い戦いが続く。

カルトンの丘からエジンバラ中心地を眺める
エジンバラ新市街にて