カンボジア北西部、タイとの国境の街ポイペト。カンボジアとタイをつなぐ主たる陸の玄関口とはいえ、普段はカジノを楽しみに来るタイ人や陸路を旅するバックパッカー集団が通る程度の小さな国境の街である。
その小さな国境検問所に、6月中旬から7月にかけてカンボジア人が殺到、その数は2週間程度の間に20万人をゆうに超えたとも言われる。2006年9月以来となるタイのクーデター勃発の影響により、タイから逃げ戻るカンボジア人が大挙して国境に押し寄せる事態となったのだ。
8年ぶり19回目と、ある意味“クーデター慣れ”していると揶揄されるタイ国内では、前回の反政府デモの際の空港封鎖のような大きな混乱を招く事態にまでは発展しないまま今日に至る。
だが、意外なところで直接あおりを受けたのが、6月28日に隣国カンボジアの首都にグランドオープンした「イオンモールプノンペン」だ。
タイのクーデターでアジア最大規模のイオンモール開業に黄信号
敷地面積6万8000m2、延床面積10万8000m2(地上4階)、駐車台数約1400台。総合スーパー(GMS)および食品スーパー(SM)の「イオン」を核店舗とし、モールには日本からのテナント49店を含む約190店の専門店が出店。
ほかにも約1200席を擁するカンボジア国内最大のフードコートや各種レストラン、同国内最大のシネマコンプレックスやスケートリンク、ボーリング場等のアミューズメント施設も擁する大規模ショッピングモール。
マレーシア、中国、ベトナム等、果敢な海外進出を図るイオンモールの既存店舗の中でも、「イオンモールプノンペン」はアジア屈指の規模を誇り、小国カンボジアにおいてその総工費は200億円を超えたとされる。
ほぼ何もかもがカンボジアにとって初、もしくは最大規模。
周辺の中小規模商店や飲食店で形成される既存の“生態系”を一気に崩壊させてしまうかもしれない可能性も秘めた巨大な非日常空間は、人口約170万人(2013年中間人口調査)とされる小都市プノンペンで、グランドオープン直後の日曜日には10万人を超える来場者数を飲み込んだと言われ、その強烈な集客力を内外に見せつけた。
そのイオンモールプノンペンが予定していたプレオープン内覧会が6月20日。本来はその後もソフトオープンの形で営業を続け、6月28日にグランドオープン、30日にはカンボジアのフンセン首相も招いての式典となる予定だった。