昨年6月、「『原発再稼働ゼロなら、電気代50%値上げも』」と題し、経済産業省で電気料金の値上げの審査をしている電気料金審査専門小委員会の委員長、安念潤司・中央大学法科大学院教授にインタビューした記事を掲載した。

 それから1年経ったが、原発はいまだに稼働ゼロ。再稼働時期が決まっている原発もゼロ。円安に伴う輸入原燃料価格の上昇も加わって「震災前より電気代50%上昇」が現実味を帯びてきた。

メドが立たない原発再稼働、電気料金は大幅に上昇

 一般には再稼働を審査しているのは原子力規制委員会のように見られているが、法的には今でも電力会社はただちに再稼働できる。原子力規制委に再稼働についての審査権はないという。では、何が稼働を阻止しているのか。

 安念氏は「原発を止めていなければいけないという世の中の空気のため。日本は『法治』より『空気』が支配する『空気主権国家』だ」と語る。

 「空気を打破するには、安倍(晋三)首相自らが、電力会社は法律どおり再稼働できると表明することが大事だ」と説く安念氏に再度、原発行政のあり方を聞いた。

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安念 潤司(あんねん・じゅんじ)氏 1979年3月東大法学部卒、北海道大学法学部助教授、成蹊大学法学部教授などを経て、2007年12月から中央大学法科大学院教授。経済産業省の「電気料金審査専門小委員会」委員長

井本 標準家庭の7月の電気料金は、東日本大震災が起こった2011年3月に比べ大幅に上がっています。上げ幅の少ない北陸電力で13%、一番高い東京電力は37%、平均して20%以上です。規制のない産業用はもっと高い。

安念 1年前は大ざっぱに「このままなら電気代は5割上昇もあり得る」と言ったのですが、今は本当にそうなって不思議はない。というか、見通しがまったく立たない状況です。正直、ここまで再稼働が遅れ、1基も動かない状態が今日まで続くとは考えていませんでしたね。

井本 典型例は東京電力です。東電は2012年7月に値上げ申請しましたが、値上げは2013年4月に柏崎刈羽原発5、6号機(新潟県)が動くことが前提でした。

安念 まあ4月は難しいが、7月か9月、遅くても2014年初頭には再稼働できるだろうと関係者は皆、見ていましたよね。今や一体いつになるのか、まったく音沙汰なしという状況です。