当連載3回目では、昨年4月に導入された、東京都墨田区による「すみだ良質な集合住宅認定制度」を取り上げたが、今年1月、ついに第1号が認定された。
認定第1号は意外にも賃貸住宅、その認定適合項目は?
以前にも書いたが、認定制度は分譲、賃貸を問わない。しかし当時、賃貸住宅についてはまだ問い合わせもないということであった。
先行して同様の制度を導入している大阪市においても、賃貸住宅の認定はわずかであることから、最初の認定は分譲マンションだろうと予想していた。ところが、意外なことに第1号の認定は賃貸マンションであった。
認定物件は、京成押上線八広駅のほど近くにあり、5階建て全20戸で、各戸は延べ床面積60~65m2の2LDK、全てファミリー向けとなっていて、「子育て型」と「防災型」の2種類の認定を両方取得している*1。これとは別に、東京都の「子育て世帯向け優良賃貸住宅」制度*2を活用しており、1階に保育所を併設している。
*1 墨田区の「すみだ良質な集合住宅認定制度」については、大規模災害から家族を守る日本の最新住宅(3)「賃貸住宅の防災力を強化するために必要なこと」を参照されたい。
*2 子育て世帯が安全で安心して居住できる住環境を整備するため、東京都が平成22(2010)年度からモデル事業として取り組んでいる事業。整備資金の一部を助成することにより、子供の安全の確保や子育て支援施設の併設等をした良質な子育て世帯向けの民間賃貸住宅。
防災型の認定適合項目では、必須項目として備蓄倉庫、雨水貯留槽と揚水ポンプ、各戸に家具転倒防止金具が設置できる長押などの備えがなされ、選択項目のハード面では、災害用仮設トイレとそれが設置できるマンホール、災害時に居住者以外の者が一時待機できる共用部分の確保、破損した窓ガラスが落下や飛散しない措置が取られている。
選択項目のソフト面では、オーナーと管理責任者が町会の防災訓練に参加すること、災害時の防災協定を区と締結することを適合項目としている。
認定の経緯
墨田区の担当者、都市計画部住宅課主事の伊藤隼佑(いとう・しゅんすけ)さんに、認定の経緯を伺った。
「昨年の夏頃から、建設事業者*3から相談があった。当初は『子育て型』の認定を希望していたが、『防災型』も認定基準を満たすことができそうなので申請したいという申し出があった」のだという。つまり、当初は子育て支援タイプの賃貸マンションとして企画された物件だったのだ。
*3 株式会社トーヨー建設、本社: 東京都葛飾区
物件の管理と募集業務を行っている、株式会社岡田不動産*4の小澤将吾(おざわ・しょうご)さんに、そのあたりの経緯を伺うと、「実は、子育て型の前身の、旧子育て支援マンション認定制度の活用を検討していたが、一部要件がクリアできない部分があった。その後、区が現在の制度に変更したことから要件がクリアできたため、子育て型の認定を申請した」ということである。
*4 本社: 東京都葛飾区、建設事業者のグループ企業