まさに満面の笑みだった。7月15日、米ミシガン州ホランドの建設工事現場。バラク・オバマ大統領とがっちりと握手したのが、韓国を代表する財閥であるLGグループの具本茂(ク・ボンム)会長だ。
米大統領の参列は異例中の異例、工場の起工式
「アンニョンハシムニカ?」。オバマ大統領は、人なつこい表情を見せながら韓国語でこう呼びかけた。
この日、ワシントンは、オバマ政権の最重要政策案件である金融規制改革法案の上院可決を控え、緊張状態にあった。議会対策に追われていたオバマ大統領だったが、この日、ミシガン州へ飛び、ワシントンへとんぼ返りする計画は変更しなかった。
大統領が出席したのは、LG化学が新しく建設する電気自動車用バッテリー工場の起工式。米国の大統領が、民間企業の工場起工式に出席するのは極めて異例だ。韓国企業の起工式に出席するのも、もちろん初めてだった。
「今日の起工式は、単に1つの工場が建つという意味ではない。この町とこの州、さらに米国の新たな未来を建設するという意味があるのだ。困難に直面している米国経済ではあるが、エコカーの量産を通して未来型の雇用を創出していく」
オバマ大統領はこうスピーチで語ってみせた。
将来事業にアクセル全開
「何が何でも、この事業を育成せよ!」。LGグループの具会長は、2000年以降、赤字が続くバッテリー事業を「将来事業」に据えて、拡大アクセルを踏み続けた。
既に韓国には電気自動車用バッテリーの量産工場を建設しているにもかかわらず、米国にも工場建設を決めたのは、「必ず巨大事業に育つ」との信念から。「巨大市場である米国でまず先手を打とう」という強い意欲だった。
LG化学の新工場は2012年に稼働する。リチウムイオン電池などを、プラグインハイブリッド車ベースで年間20万台分生産する。
「エコカー」を成長戦略に掲げるオバマ政権も、LGのいち早い決断に、「大統領の訪問」という破格の厚遇で応えた。さらに、ビッグスリーと電気自動車用などのバッテリー事業で提携した企業に24億ドルを無償支援する計画を決めた。