先日、スイス在住の友人から受け取ったメールには「3週間バカンスに出かける。そちらはいつバカンスを取るのか」と記してあった。日本を除いて(?)世界中で多くの人々が長期休暇で海や山に向かう季節になった。

ソチ冬季五輪に向け、ロシア国土をかたどった豪華な人工島建設へ

ソチ五輪に合わせて黒海沿岸にロシアの国土をかたどった人工島が建設されている〔AFPBB News

 もっとも、コーカサス情勢に関する著名な識者がのんびりとバカンスに行くことからも、今年は近年稀にみる平和な夏と言えるかもしれない。

 実際、夏になると毎年「戦争勃発か」の言説が飛び交い、一昨年は現実に大規模な戦争が発生した。

 また、日本ではほとんど取り上げられなかったが、昨年夏にも戦争が始まるとの噂がグルジアを駆け巡った。

 コーカサスでは海抜5000メートルを超える山岳地帯が中央部にそびえ立つため、冬期の軍事作戦は大きな制約を受ける。戦争が季節に左右されるのは今も昔も変わらないのだ。

 もちろん平穏とは言っても、今年に入っても偽報道番組事件など緊張緩和の兆しは一向に見えないが、5月の地方選挙で予想通り与党が圧勝し、とりあえずグルジア国内は落ち着いている。紛争当事者にもたまには休息が必要ということだろうか。

知られざるリゾート地帯、黒海

海だ!波打ちぎわでジャンプ、ウクライナ

ウクライナ南部沿岸セバストポリで、浜辺の波打ちぎわで飛び跳ねる犬〔AFPBB News

 戦争がなければ、指導者たちも一息つくことになる。ソ連時代には黒海沿岸が指導者たちの保養地として日本でもそれなりに知られていたと考えられるが、ソ連崩壊以降、地域に関する情報は日本ではだいぶ忘れ去られた感もある。

 筆者のゼミにも1991年生まれの学生が入ってきたが、2014年に予定されているソチ五輪に向けて、これから日本でも黒海に関する情報が再び増えてくることが期待される。

 ちなみに有名な出来事でもあるが、第2次世界大戦末期、フランクリン・ルーズベルト、ウィンストン・チャーチル、ヨシフ・スターリンによってソ連の参戦などが決められた会談の行われたヤルタも、黒海に突き出したクリミア半島随一の保養都市であった。

 これまでもヨーロッパにより近く経済的にも重要性の高かった黒海北岸については、欧米でも比較的関心が高かったように思われる。