「藤さん、地震対策は予知ばかりでなく、減災が大事だよ」
5月5日、13日と立て続けに首都圏で直下型地震が発生した(5日には東京都心で東日本大震災以来の震度5弱の揺れを感じた)。しかし、気象庁は「想定される首都直下地震と今回の地震は震源の場所や規模が異なることから関連性は低い」との説明を判を押したように繰り返すばかり。居ても立ってもいられず、角田史雄埼玉大学名誉教授に電話をしてしまった。
角田氏は「今回の地震は、2011年8月の駿河湾地震(M6.2)を発生させた熱エネルギーの残滓が起こしたものだと思う。引き続き2017年頃と2020年前後に首都圏南部で直下型地震が起きるリスクがある」と、自ら提唱する「熱移送説」に基づいて明快に解説してくださった(「2020年前後に首都圏南部を直撃? 直下型地震襲来への備えを急げ」参照)。そして上記の発言で、地震予知にばかり関心を持つ筆者の姿勢を正してくださったという次第である(角田氏は現在、埼玉県の地震想定に基づく地震減災対策の整備に尽力されている)。
「減災」とは、2006年半ば頃から使われ始めた用語だ。地震を正確に予知できない状況では、あらかじめ被害の発生を想定した上で、その被害を最小化する取り組みを行った方が現実的であるという考え方である。
助け合いの精神でコミュニテイー復活を
災害時の地域の弱点を事前に発見し、対策を講ずるためには、地域住民の協力が欠かせない。近年は、行政と地域住民が協働で地域の防災力を向上させる動きが活発になってきており、その一環として「共助力マップ」が注目されている。
「共助」とは、地域の災害時に要援護者の避難に協力したり消火活動を行うなど、地域住民が助け合うことだ。「半径100メートルに何人いるか(その人の年齢による共助力を加味(40代男性を100とすると、60代男性で70、20代女性で30とする)」を数値化したものが「共助力マップ」である。これを見ると、古くからの住宅街などでは住民が高齢化していて、人通りが少なく、いざというときに助けてもらえる人がいないという「現実」が如実に浮き彫りになる。
昨今、「孤独死」が問題になっているが、近代以降の日本は本質的に無縁社会だったのではないだろうか。「血」の意識が希薄だったから、経済発展とともに都市化が進むと旧来の大家族制はたちまち崩壊し、社会は「核家族」という最小単位のイエの集合体になってしまい、ワンルームマンションという日本独特の居住形式も発生した。