4月21日、浙江省温州市蒼南県である事件が起こった。行政と民が路上で衝突、それをきっかけに大きな暴動事件に発展した。筆者はこの事件に注目している。なぜならば、事件のきっかけが“ほんの些細な出来事”だったからだ。

 事件の発端となったのは、通りすがりの男性が行った携帯電話による撮影だった。この男性が撮影したのは、城市管理行政執法局の係員が行った“道端の取り締まり風景”だった。

路上の焼き芋屋と取り締まりに来る「城管」の車輛。上海にて

 この係員は、市民からは「城管」(chengguan)の略称で呼ばれ、主に路上での飲食販売や物品販売などの違法営業の取り締まりなどを行っている。

 しかし、その取り締まりはむしろ“無慈悲ないじめ”にも近い。路上で物を売る人たちは、日銭で生き延びる、いわば社会の底辺層である。そんな彼らの営みを、法令法規をかざして蹴散らす城管は、庶民にとって恐ろしい敵だと言ってもよい。

 城管もまた日頃のストレスを“庶民いじめ”で解消しているような節もある。彼らもまた低収入で生活はカツカツ、社会に対する不満は小さくない。

 蒼南県で、この城管の取り締まりを巡って衝突が起きた。衝突した相手は道端の行商人ではない。彼らの立場に同情し、取り締まり現場にカメラを向けた1人の男性だった。この男性は城管の行為に「やめろ」と声を上げ、その一部始終をカメラに収めようとした。

 城管もこの男性の撮影行為に対し「やめろ」と阻止した。ところがこの男性が写真を取り続けたため、数人の城管がこの男性に対し、殴る蹴るなどの暴行を加えたのだ。