マット安川 今年で米中国交35周年――ゲストの宮崎正弘さんとともにその歴史を振り返り、今後の日本の外交戦略がどうあるべきかお伺いしました。

アジア諸国が不信感を募らせる米国の対中国弱腰外交

宮崎 正弘(みやざき・まさひろ)氏
評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。近著に『オレ様国家 中国の常識』『2012年、中国の真実 』『中国が世界経済を破綻させる』など。メールマガジン『宮崎正弘の国際ニュース・早読み』を発行。(撮影:前田せいめい、以下同)

宮崎 今月23日に米国のオバマ大統領が来日します。国賓待遇だとか、2泊3日だとかで騒いでいますが、そんなことは枝葉の話で、問題は会談の中身です。

 オバマさんは日本の後、韓国、マレーシア、フィリピンに行きますが、この4つの国に共通するのは、米国に対する不信感です。

 つまり、米国はいま衰退の一途で、ずるずる後退している間に、中国が台頭してきた。その中国はフィリピンのスカボロー礁とセカンド・トーマス礁を狙っています。ベトナムからはスプラトリー諸島を取り、パラセルアイランドでは堂々と滑走路付きの飛行場を造ったりしている。

 これに対して米国はぜんぜん反撃もしていない。ただ言葉で、公海の自由を守ろうとか、現在の秩序を力で変更しようとするいかなる企てにも反対であるなどと言っているだけで、全部リップサービスです。

 この流れからいくと、次に中国軍が尖閣諸島に入ってきても、米国は条約上の義務は果たすとは言っているけれども、それもリップサービスに終わった場合はどうするのか。そのことを真剣に考えなければいけません。

 実は、オバマさんは安全保障への関心が薄く、知識もなく、非常に危なっかしい大統領なんです。オバマケア(医療保険改革法)ばかりに政治的比重を置くものだから、米国議会はオバマ批判一色になりつつあります。

日本に対するアジア諸国の期待が高まっている

 中国に対して米国が何もできないとなると、周りの国は慌てます。だから豪州は軍事力の中でも一番精巧な部品がほしいということで、日本が協力することを決めました。フィリピンには巡視船10隻を提供するほか、ベトナムにも提供します。そうやって米国が逃げていく分の空白をいま日本が埋め始めている。

 なおかつ日本に対する期待がアジア諸国の中で高まっています。つまりアメリカへの不信感が増大した分の空白を、日本がこの先も埋めていけるかどうかということが、大局的に言うと一番大きな問題です。

 それに比べると、TPP(環太平洋経済連携協定)なんていうのは小さな話なのに、日本のメディアはその比重が大きい。安全保障問題とTPPが絡まっているような報道をしていて、何とか妥協してTPPを妥結しなければいけないとか。