「現在、日本には48基の原発があります。一昨年に『40年廃炉基準』、昨年7月に『新規制基準』ができて、再稼動には17基の原発しか手をあげていない。新基準に適応するようにコストをかけても、近い将来、廃炉基準にひっかかる古い炉が多いからです。おそらく最終的に再稼動に手をあげるのは30基程度。活断層の問題などがあって実際に動くのは25基。2030年には20基程度になります。原発が20基になると、2500万KWの電力が足りなくなる。どうやってそこを埋めるかという問題が出るからです」
各種発電のメリットとデメリット
日本の2010年の総発電量は約1億KWだった。それが20年後には約4分の1、2500万KWの電力が減少することになる。この穴をどうやって埋めるのか。それが、これからの日本のエネルギー政策のカギになる。
「もっともコストが低いのは石炭火力発電です。日本の石炭火力は熱効率が42%と高く、アメリカ(37%)や中国・インド(32%)をしのいでいます。しかし石炭を使えばCO2が出るのは間違いない。日本の石炭火力発電技術を海外展開し、海外で減らしたCO2を国内で輩出できるような取引ができればいいのですが、現状そこまでの動きが出ていないのが残念なところ。実際、日本のCO2排出量は13億トン。日本の技術を海外展開すれば、世界中で15億トンのCO2が減る。ここは日本政府に努力してもらいたいところです」
というわけで、今のところ石炭に力を入れるのは難しい。力を入れていくべきは、天然ガスなどを利用した発電、そして再生エネルギーということになる。
「天然ガスのメリットは石炭よりもCO2の排出量が4割少ないところです。供給元が分散しているのも安定供給に向いています。しかし、今のところ日本は高い天然ガスを買わされているという現状があります。なぜ高い天然ガスを買っているかというと、大量仕入れができないからです。同じアジアで天然ガスを輸入している韓国は、ガス会社のKogasが電力会社の分までまとめて輸入している。日本はまとめ買いがあまりうまくいっていない。垣根にとらわれず、うまく連合体を組めるようになれば、コストも下がり、ガス発電も増えていくでしょう」
今、注目度が上がっている再生エネルギー、風力、太陽光、地熱、小水力、バイオマス発電のメリット・デメリットについてはどうだろう。
「再生エネルギーの最大のメリットはCO2が出ない点です。国産エネルギーで安全性も高くセキュリティ上の問題が少ないのもメリットです。ただし、風力・太陽光発電は稼働率が低く出力変動が激しい。安定供給が必要なベース電源にはあまりむいていません。
それから地熱発電。日本は世界で三本の指に入る地熱発電に適した地域であり、技術も世界トップクラスです。しかし問題は、地熱発電に適した地域の8割が国立公園や国定公園に集中しているところで、なかなか開発が進みません。また、温泉業者の反対もある。地熱発電で温泉が枯れたという話は今のところゼロですが、業者にとっては死活問題なので仕方ない面もあります。これをクリアするためには、業者とWin-Winの関係を築いていくのが必要です。別府の杉乃井ホテルや、霧島の国際ホテルのように、温泉業者が地熱発電を行うというのは一つの方法だと考えます。