1960年代のラテンアメリカ文学ブームで人気を博し、82年にはノーベル文学賞を受賞した作家ガブリエル・ガルシア=マルケスが、4月17日、87年の生涯を閉じた。
世界で3000万部が販売された「百年の孤独」
歴史的事実と荒唐無稽な出来事が錯綜し、欲望あらわに奇跡も悲劇も起こる口承伝説的世界と現実的世界がシームレスに並ぶ「魔術的リアリズム」の高度な手法で人々を魅了、1年半閉じこもり書き上げたという1967年の代表作「百年の孤独」は、世界で3000万部を売り上げるベストセラーとなった。
コロンビアのカリブ沿岸地域に生まれ、スペイン語文学の最高峰とされる傑作の数々を書き上げてきたその作品背景に母国の歴史と生活は欠かせない。
架空の村マコンドの興亡を綴る「百年の孤独」の無数の挿話にも、自由派と保守派の対立、バナナ農園でのストと軍による虐殺など、ガルシア=マルケスが生を受ける頃までのコロンビア百年の歴史とリンクするものは多い。
1830年、ラテンアメリカ統合の理想の下、スペインの支配から南米を「解放」したシモン・ボリバルが築き上げた大コロンビア(今のコロンビア、ベネズエラ、エクアドル、パナマ)から、ベネズエラとエクアドルが独立した。
残された「ヌエバ・グラナダ共和国」では、かつての連邦派と中央集権派が自由党と保守党になるが、連邦国家「コロンビア合衆国」となっても、中央集権的「コロンビア共和国」となっても、内戦は繰り返されるばかり。1899年には10万人もの死者を数える「1000日戦争」まで勃発してしまう。
そんな内戦で疲弊するコロンビアから、1903年、「パナマ共和国」が分離独立を宣言。
運河利権目当てに後ろ盾となっていた米国は、やがて、コロンビアにもユナイテッド・フルーツ社(現チキータ)など急速な資本注入を始め、インフラ整備が進む一方で、粗悪な労働環境に抗議するストライキが頻発。1928年には、バナナ農園での軍の発砲により多数死傷者を出す虐殺事件(Banana Massacre)が起きる。
自分たちの「歴史」が、既に羊皮紙に書かれていたことが判明、マコンドは消滅し「百年の孤独」は終幕を迎えるが、現実世界は時を刻み続ける。
「Banana Massacre」を非難し労働者の権利向上を訴えた政治家ホルヘ・エリエセル・ガイタンは人気を博し、1930年代、自由党が政権を取った。