今月、日本の中小企業経営者を相手に詐欺行為を行ったベトナム人経営者に終身刑が言い渡された。
4月15日付時事通信ドットコムの報道によれば、14日、ベトナムのハノイ市人民裁判所で自動車部品製造スギテック(三重県津市)の杉本社長(69歳)がベトナムに投資した資金を騙し取られたと訴えていた事件の判決公判(一審)があり、ベトナム企業(機械部品製造のキーニー機器)女性社長ダオ・タイン・ニー被告(37歳)に対して詐欺等の罪で終身刑が言い渡された。
同時に民事の被害額弁済も認められ、杉本社長がベトナムに振り込んだ約87万米ドルの全額返済が被告に命じられた。
絵に描いたような詐欺事件
このような詐欺事件は、その実態・件数等は明らかではないが、現地では典型的なものだ。
日本企業がベトナムで新規投資するに際し、まず必要な人脈を辿り、そこで辿り着いた現地人(本件では日本人)から現地ビジネスパートナーを紹介してもらう。そして、紹介されたベトナム人経営者と合弁事業を設立することを短期間で決定。
ところが、ベトナム人経営者によって、日本から振り込まれた資金を使って新設した工場・設備がすべてベトナム人の単独名義とされる。一般には振り込まれた資金が私的に流用されるケースが多いかもしれないが、いずれにしても典型的な詐欺事件だ。
現実問題として、ベトナム人経営者がこのような悪事を犯してしまうことは、一定の確率で発生する。その確率がどの程度かは定かではないが、ベトナムで長年ビジネスをしている日本人ビジネスマンの多くは、比較的高い確率ではないかと感じているかもしれない。
入念な事前調査を怠ったのが悪いとも言い切れない
第三者の立場から考えれば、紹介されたベトナム人経営者が信頼できる人物かどうかを見極めるために時間をかけて付き合い、その上で合弁事業のパートナーにするかどうか判断すべきだったのではないか、という見方もあるだろう。