世界の航空史上に刻まれる最も謎に満ちたマレーシア航空機ミステリ—――。消息不明から40日が経ち、捜索は6週間目に突入したが、同航空370便の捜索は今も24時間体制で続けられている。

マレーシア機捜索は無人潜水艇投入で新たなフェーズに

 捜索を指揮するヒューストン前豪国防軍司令官は14日、ブラックボックスの電源がすでに切れた公算が大きいと判断。信号による音波の探知を断念し、カメラや水中の音波を測るソナーを完備した米海軍の無人潜水艇「ブルーフィン21」を海中に投下し、ブラックボックスを含め、機体を捜索するため海底探査を実施することを明らかにした。

 14日初めて投入された「ブルーフィン21」は6時間活動した後、安全装置が作動、深度の限界を超えたため捜索を中断し、一端帰還。 また、オーストラリア当局は、音波を探知した周辺から約5.5キロ地点で油膜の回収を行ったことも発表し、その油膜が不明機から流出したものか詳細を調べるとした。

さらに2信号を探知、「数日中」の不明機発見を期待 豪高官

豪「オーシャン・シールド」の船内で、ブラックボックス探知機「ピンガー・ロケーター」からのデータを監視する乗組員〔AFPBB News

 これまで、5日と8日にオーストラリア西部のパース北西約1万7500キロの海域で同機のブラックボックスと一致する信号が、異なる日時で4回にわたり探知されたと発表され、オーストラリア当局は「これまでで最も有望な手掛かり」としてきた。

 同音波はいずれも深さ約4500メートルの深海から発信されたもので、11日、オーストラリアのアボット首相は訪問先の中国で、「マレーシア航空機のブラックボックスから発信されたものと確信」と述べた。

 10日にも信号を探知したが、ヒューストン前豪国防軍司令官は11日、「10日の信号は、不明機のブラックボックスに関連している可能性は低い」とアボット首相の“確信発言”を揺るがすコメントを発表。不明機の捜索に大きな期待が寄せられたものの、15日夜(日本時間)までで、新たな発見は報告されていない。

 深さ4500メートルの海底は暗闇の世界で、非常に高い水圧に耐えられる有人潜水艇は極めて少なく、これまでこの深さに到達したケースも稀だ。

 航空史上で最も難解な謎を解くのに最有力とされた米海軍の最新鋭対潜哨戒機「P-8ポセイドン」 (同機は沖縄の米軍基地に配備されていた)をもってしても難航が続き、捜索活動は専門家にとっても想像を絶するほどの、未知の世界にすでに突入していることを裏付ける。

 その「未知の捜索」が展開される同海域は世界で屈指の深海。ジョンストン豪国防相は、「これまでこの周辺で非常に多くの船舶が遭難。波も30メートルほどに達し、非常に危険だ」とその困難さを示す。西オーストラリア大学のパティアラッチ教授も、「これ以上、最悪の墜落場所はない」と言い切るほどだ。

 捜索の最後の頼みの綱の一つ、無人潜水艇「ブルーフィン21」は、最新の機能を備えたソナーで詳細な音響画像を作成できることで知られる。昨年は、日本沖で墜落したF15戦闘機の発見にも寄与した。

 また、米海軍には、2009年のエールフランス機大西洋墜落事故で機体やブラックボックスなどを発見した探査機「レモラ6000」も待機しているという。

 しかし、エールフランス機が発見されたのは海底山脈の平坦な位置で、今回のインド洋の地形や水深等から考えると、早期にブラックボックスやマレーシア機の残骸を発見するのは絶望的と見られ、捜索は暗礁に乗り上げているのが現状だ。