2006年、ネスレ日本は「ネスカフェ スパークリング・カフェ」を販売しました。コーヒーを炭酸飲料化したもので、多くの人にとってはおいしくはないだろうが一部には強烈に支持されるだろう、と考えて出された商品だと聞いています。
結果は大失敗で、ワンシーズンで消えてしまいました。
けれども、清涼飲料業界の方がどう思われているのか知りませんが、私はコーヒー炭酸飲料を市場に出したネスレ日本は、素晴らしい会社だと思いました。並の会社なら、こんな失敗が見えているような試みなど、させてはくれないだろうからです。
6次産業化の典型的な失敗パターンとは
加工食品の製造や直販など、農家が農業生産以外の仕事をすることを、「6次産業化」として称賛する意見が世にあふれています。私のような者でも、たまに講演に呼ばれることがありますが、求められる話のテーマも、たいていはこの「6次産業化」です。
筆者は以前6次産業化に対して、どちらかといえば否定的なことを書いています(「「6次産業化」しろと言われてもできません」)。それでも呼ばれるなら、呼んで下さった団体のために6次産業化の成功に資する話をしないといけません。
6次産業化の話をする上で私が幸運だったのは、前職の経営コンサルタント会社にいた時、一番多く携わったのが、食品業界の、それも6次産業化との相性の良い製菓製パン業界だったことです。
この業界に関しては、父ちゃんが作って母ちゃんが売る個人企業から、3桁、4桁の従業員を抱える業界の“大企業”まで、そして赤字企業からトップクラスの高収益企業まで、内部から見ることができました。
そうした経験を基に講演で何をしゃべっているのかと言うと、最初に失敗の典型的パターンについてしゃべります。典型的な失敗のパターンは以下の通りです。