2014年3月31日、韓国の上場企業などが、5億ウォン(1円=10ウォン)以上の報酬を得た登記役員(日本の取締役に相当)の役員報酬を一斉に公表した。最も高額の報酬を得ていたのは財閥3位、SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長で301億ウォンだった。サムスン電子の最高経営責任者(CEO)の報酬は、67億7300万ウォンだった。
韓国で企業経営者の報酬が公開されたのは今回が初めてだ。なぜこんなことになったかと言うと、ここ数年、韓国で高まっていた「経済民主化」の風潮に乗って、2013年秋に「資本市場と金融投資業に関する法律施行基準」が改正されたためだ。「事業報告書提出法人で年俸5億ウォン以上の登記役員と監査役」に対して氏名と報酬額などを公表することが義務付けられた。
「儲けすぎ批判」恐れる大企業vs公開基準に不満抱く市民団体
「事業報告書提出法人」というのは、株式を公開している企業と別途定めた企業のことで、2000社以上が対象になった。
初めての公表の期限は、2014年3月31日だった。もちろん、これ以前に公表してもよいが、大半の企業がこの日に公表した。「目立ちたくない」ためだろう。
報酬公開については、韓国内でもさまざまな議論があった。
大企業は、この法改正に強く反発していた。たたでさえ、韓国では、経済格差の拡大が社会問題となり、一部では「ごく少数の大企業だけが儲けすぎている」という声も強い。大企業の経営者が巨額の報酬を得ていることが分かるとどんなとばっちりを受けるかという不安からだ。
一方で、大企業に批判的な市民団体などからは、「公開基準が不十分だ」という批判も出ていた。今回の対象者は、「登記役員」に限定されている。例えば、サムスングループの李健熙(イ・ゴンヒ)会長や長男の李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長などは「登記役員」にはなっていない。このため、今回の公開対象ではなく、「最も知りたいことが公開されない」との不満からだ。
もっとも、李健熙会長の場合、ここ数年、報酬は受け取っていない。ほとんどの収入は、「配当」であり、事実上、その金額が公開されている。「登記役員」ではないが、報酬を得ているオーナーもいると見られ、こうした声が出るのだ。また、今後は、「登記役員」への就任を回避する動きが強まるとの見方もある。
注目集めた大手財閥オーナーたちの報酬額
では、初めての公開内容はどうだったのか。
オーナーで最も報酬が多かったのは、崔泰源会長だった。SKテレコムなど4社から基本給94億ウォン、成果給207億ウォンを得た。
日本でも比較的知られているオーナーの報酬は、鄭夢九(チョン・モング)現代自動車グループ会長140億ウォン、金升淵(キム・スンヨン)ハンファグループ会長131億2000万ウォン、李在賢(イ・ジェヒョン)CJグループ会長47億5400万ウォンなどだった。