米国のバラク・オバマ大統領にとってこの夏は極めて厳しい政治季節となってきた。オバマ大統領の統治や政策や思考の中核部分への激しい非難が高まってきたのだ。
わずか1年半前、白馬にまたがる王子のように、いかにもさっそうと登場し、米国内だけでなく、全世界に清新な風を巻き起こした、あのオバマ大統領とはまるで別人のような暗澹としたイメージが頭をもたげてきたのである。
大統領報道官が「民主党は選挙に負ける」
オバマ大統領の苦境を、今、最も端的に象徴する事態としては、まず2つの出来事が挙げられる。
第1はロバート・ギブス大統領報道官が7月11日、NBCテレビのインタビューに答えて、「(今年11月の中間選挙では)下院は共和党が多数を制することはもう疑いがないだろう」とあっさり述べたことだった。
言うまでもなくギブス氏は民主党の行政府の代表である。そんな人物が、自分の政党が次回の選挙では負けるだろうという見通しを淡々と語ったのだ。
下院では現在の議席は民主党が255、共和党が176と大差が開いている。共和党が逆転するには40もの議席を増さねばならない。ところが最近の一連の世論調査では、共和党が逆転を果たすと明言できるほど、民主党の支持率が激減しているのだ。
しかもその原因は、民主党の大統領のオバマ氏への批判や不満に帰せられている。オバマ大統領の代弁者であるはずのギブス報道官までがつい認めてしまったほど、オバマ政権は人気が凋落している。
第2は、ワシントン・ポストとABCテレビが共同で実施した世論調査の結果が、7月13日に報じられたことだ。調査によれば、登録有権者の58%が「オバマ大統領の国家の運営は信頼できない」と答えたという。オバマ大統領の経済運営を支持する割合は43%、不支持が54%という結果だった。
ワシントン・ポストもABCも、本来は民主党支持のメディアである。ラスムセン、ギャロップなど他の世論調査ではオバマ大統領の支持率はもっと下がっている。
ワシントン・ポストの同じ調査では、「経済回復のために連邦政府はもっと支出を増やしてよいと思うか」という問いに対し、賛成、反対がいずれも48%という結果が出た。だが、さらに「その結果、連邦政府の予算赤字を増やしてもよいと思うか」という質問には、賛成が39%、反対が57%と、圧倒的に拒否反応を示している。
米国民の多数派は、連邦政府の支出だけを増すオバマ政権のリベラル的「大きな政府」策には明らかに反対なのである。
経済も外交も、失策続きで四面楚歌のオバマ政権
これまでオバマ大統領に反対や不支持を表明する人々は、大ざっぱに「保守派」として片づけられてきた。
だが、そうした単純な色分けは通用しなくなっている。まず政治評論家たちの間で民主党寄りとされる長老のデービッド・ブローダー氏までが、「今や米国民の大多数は、共和党を議会の多数派にすることによって、オバマ大統領の政府支出の大増額というリベラル傾向にブレーキをかけたいと望むようになった。これは健全な動きだと言える」とまで論じるようになった。
さらに共和党側で「あのリベラル派の人物までが」と驚きをもって受け止められたのが、民主党支持の政治評論家ボブ・ハーバート氏によるオバマ批判である。